三成であやかしパロ



変な所に迷い込んじゃったなあ。

わたしは辺りを見回して溜め息をついた。
何だかもやみたいなのが充満してるし…。あ、向こうに見えるのって人魂じゃないの!?
心霊体験だわ。

さっきまでただの林だったのに、あっという間に心霊スポットに早変わりってね。


呑気にわたしが歩いていたのがいけなかったのか、前方から急に飛び出してきた人魂とわたしは正面衝突した。


「うぐっ!」


人魂だからすり抜けてくれるのだろうと思っていたんだけども、現実はそう優しくないらしい。思いっきりぶつかりました、しかも鳩尾に。


「きさま…っわたしのじゃまをするか!」


舌っ足らずの声が聞こえるので足下を見れば、可愛らしい吊り目の男の子がわたしを見上げているじゃありませんか。しかもちょっと涙目。


「ごめんね、ちょっと余所見してて」

「きさまどこのあやかしだ、もしいえやすのさしがねだというならきってすてる!」


あやかし、妖怪の事?
おもわず男の子の姿形をまじまじと見てしまう。


「なにをみている!」


あ、怒った。
可愛い尻尾が膨らんじゃって更に可愛くなってるぞ。


ん?尻尾?


「君、もしかしてお稲荷さん?」
「わたしはきゅうびのきつねだ!あのようなかくしたとおなじにするなっ」


怒っているのがよく分かる位に尻尾がバタバタ揺れる。


「一、二、三、四、五、六、七、八…。あれ、一本足りないよ?」


何回数えても八本しかない。
見間違いという訳じゃなさそうだ。
へたり、と銀色の髪に耳が埋もれる。


「…きさまにはかんけいのないはなしだ」


尻尾もへなへなと頼りのない動きで所在なげだ。


「何、大した事ではあるまいて。して何故人間がここにいる、迷い込んだにしては深みに嵌っておるようよの」


いきなり聞こえてきた声にわたしは辺りを見渡した。
だ、誰もいないとかホラーすぎる…!


「我はここよ。三成、奴はただの人間であろ。よく見やれ」


三成、というらしい男の子の周りをふわふわ黒揚羽が舞う。
この黒揚羽が喋っているらしい。


「にんげん…。ぎょうぶ、けっかいはかんぺきだったはずではないのか」

「我には分からんなあ。暗がしくじったのやもしれぬ」


黒揚羽、ぎょうぶ?ヘンテコな名前だ。やけにかすれたような声で喋るぎょうぶさんは三成君の耳にとまる。

何だか内緒話してるみたいだ。
ボソボソ聞こえるし。


「ぎょうぶ、わたしはてなどかりなくとも…」

「主は降りた事などなかろ、ならば相応の先導役をつけねばなるまいて」


パタリと尻尾が地面を撫でた。三成君は言いくるめられてしまったらしい。


「にんげん、わたしをげかいにつれていけ。きょひはみとめない!」

「主を見込んでの事よ、訳は追々三成が話すであろ」

「いやいやいや、よろしくないって!わたしただの学生だし、オカルト詳しくないしっ」


首をぶんぶん振って拒否したのだが黒揚羽はわたしに囁いたのであった。


「今はあんななりをしておるが三成も相当な美少年には違いあるまい、尾が戻ればなりも変わるであろ。して、狐は恩を返す生き物よ」


「イェッサー!下界においでませ、三成様!!」


いや、だってさ。
美少年とか美味しいじゃない?
後々の楽しみの為ならどんな苦労が待ち受けてても、わたし頑張ります。



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ネタストックからあやかしパロ
見てみたいとおっしゃった方がいらしたので、小出しで(笑)

どう考えても連載向きである



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