会いたくないから



少し訪れる沈黙がなんだか気まずい。
一旦沈黙してしまうと中々空気を変えられない。無論私もそういうのは苦手だし下手だ。
でも、



「んじゃ、霊華っちは何がしたいんっすか?」



涼太君は違う。
長い間社会の波に揺られ、時に泳ぎ時に逆らいながら今まで生きてきた彼にとって、こんなことはとても容易い。
まあこの波への妥協や反抗は学生時代の彼にとっては仕事の楽しみには劣るにしろストレスとして体内で消化しきれなくて。
だからあたしというよくお互いに愚痴るような《相談役》が必要だったんだろうけれど。


何がしたいのか。
よくよく根をつめて考えていなかった現実。
自分の存在を肯定してくれない、認知症診断をうけたお祖母ちゃんに、今は会いたくない。
だけど家にいれば病院に近いこと等もあってどうしてもあのお祖母ちゃんに会わなければならないだろう。
とにかく今はあの人に会いたくない。
なら会わないためには?
とりあえず



「……涼太君。あたしをここに住ませて下さい。」



そう言ってあたしは深々と頭を下げた。




<会いたくないから>




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