嘘つきな僕ら
「助けてって、…どういうことっすか」
涼太君の心配そうな目差しは暖かいまま、私を捕らえていた。
あたしはぽつぽつと今までの経緯を述べようと、思った。
だけど。
「だいっ、じょうぶ!!ただ仕事で大きなヘマやらかしただけっ、だからね!!」
口をつくのは嘘つきな言葉。
嗚咽や多少ひきつった表情を笑顔に、普通に。
精一杯自分でコントロールできるように。
口をつく嘘八百。ブラフ。はったり。
これは、個人的な問題なんだから。自分で解決しなきゃ。
そう思ってしまった。
強がりなのは重々承知の上で。
それでもこの人には迷惑をかけたくないんだ。
「そうっすか…それは大変だったッスね…」
そういって頭を撫でる黄瀬君の手の暖かさ。
さっきまでは心地よく感じていたのに、なんでだろう
胸が苦しいのです。
またか。そう思った。
この人は、霊華っちはいつだってそう。
本当の事は自分一人で抱え込んで、迷惑をかけることを避ける。
女友達には多少なりとも頼っていた記憶はある。
だけど、ことさら俺が絡むと頑なに一人で抱え込む
ポーカーフェイス、バレバレッスよ。
こんな時、俺はいつも騙されたふりで場を潜り抜けるのが大体だった。
だから、
今回も騙されてあげるッス、霊華っち。
<嘘つきな僕ら>
[ 7/12 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]