素直になれなくて




生ぬるい感覚が気持ち悪くて目が覚めた。
……どこなのここ。
あ、そういえばあたし、涼太君に…

「おっ、霊華っち!!起きた!!」

ほらご本人の登場だ。
学校では見ることはなかったラフな姿でベッドに座っている涼太君は、少し新鮮だ。
大丈夫?ダルくない?って、まるで

『涼太君まるでお祖母ちゃんみたいじゃ…』

…………あぁ、嫌なこと思い出した。
寝惚けたお陰でボヤけていた数時間前の出来事が、鮮明に甦る。


灰色の世界。真っ白な病室。
灰色のお祖母ちゃん。真っ白なあたし。


「くっそ…なんで…っ」

思わず口に出る言葉。
涼太君がピクリと反応してこちらを向いてくる。あ、そういえばあたしどんな顔してるんだろう。きっと酷い顔なんだろうな。だってあの涼太君でさえ顔伏せてるもん。

「何が…あったんッスか」

ボソッと呟くその声は、態度とは別に、くぐった音なのに耳にポンと届いた。
言いたい。
言って楽になりたい。
言っちゃえばいいじゃん。
だけど。

「……涼太君には関係ないっしょ」

口をつくのは天の邪鬼な言葉。ホントはぶちまけて楽になりたいし、涼太君を頼りたいのに、あたしは真反対を行く。まるで鏡のように、逆方向に。
でも


「……アンタは、ここにいるんッスよ」


唐突に手を握ってそう言われたら、もう御手上げだ。
天の邪鬼さんは外へ退散して、あたしは素直に泣いた。
さっきまで泣いていたのに、涙は枯れたはずなのに。際限なく流れ出すソレを、彼は親指で拭いながらあたしの手を握り続けた。
泣き出しただだっ子をあやすように。


一頻り泣いたら、理由を話そうかな。


<素直になれなくて>

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