この感情の延長線

俺は元NBAプレイヤーにして現役モデル、タレントを続けてる、いわば有名人、芸能人ってヤツだ。
有名人てのは色々と困る。
パパラッチに追いかけられるだの人付き合いだのあー面倒。
俺は俺のまま、素のままでいたいと思う訳であって、猫かぶりなんてヤダよ面倒臭い。
だから俺は決めてたんだ。
いつもキャーキャーうっせぇ女の子達じゃなくて。
本当の、「芸能人の黄瀬涼太」じゃなくて、本物の俺を好きになってくれる。そんな人としか恋はしないって。






なーんて考えてた数瞬後にまさかの女子同級生に遭遇。なにこれおかしくね?


久し振りに会った同級生女子にいきなり抱き付かれてしかも気絶もしくは寝られた男なんて世の中そうはいないんじゃないの?
そんなね、ラブコメじゃあるまいしね。
こーいうとこでウブな男キャラとかは大体女の子の可愛さやら柔らかい香りやらに魅了される訳だ。俺はモデルだからそこででもないし、耐性もあるけどね。
あー……そーいうの考えてみるとだけど。霊華っちって、改めて見ると可愛い。鼻筋は通ってるし、今は目を塞ぐ瞼と長い睫毛の奥には、日本人には珍しい、青色の瞳が転がってるのを俺は知ってる。墨を垂らせば一瞬にして黒く染まりそうな程の白くすべすべした肌は、西洋の人形を連想させるよう。そして今俺が抱えてるその体は、羽根ほどの軽い体躯と、出るところは出てるバランスのいい凹凸加減。その上に、今は濡れてるけど彼女好みの、彼女に似合う服を着こなしていて。
今は分からないが彼女は人当たりも良くて、本当にいい子だった。ファンの子みたいな声のかけ方や見方はしなくて、いつも俺をひとりの人間として見てくれる。彼女は自分の中では親友的な位置に置いてた。いや、勝手にだけども。
だからお互い色々悩み事を相談し合う相手はいつもふたりでだった。他にも言える人はいたけど、一番に相談するなら、彼女であり、彼女からすれば俺だった。俺はバスケのこと、彼女は将来とか親のこと。それは今となっても週一はお互いどちらかからメールが来て、雑談が始まるんだけれど。
……まあ、そんな彼女を一言で現すならば、『美人な親友』。



って待てよ俺!?何本格的に考えてんの!?
そんなことを悶々考えていたら、もう家の前まで歩いてきていた。俺はブンブン頭を振って邪念を払い、人に見つからないようにこっそり中に入った。
そしてどーするか悩んだけれど、霊華っちの服は脱がせることは流石に無理なので、取り合えず暖房をきかせた俺の寝室に寝かせておいた。
スースーと眠る彼女の目の辺りには涙の跡。大変だったんッスね、と頭を柔らかく撫でる。ふわりと香る霊華っちの香りは、柔らかいけれど、優しげだけどどこか悲しそうな湿り気を含んでいた。


しかし、お互い仕事があって、久し振りに彼女をきちんと見ていた訳だが…見ていたら「可愛い」だのなんだの色んなことが頭に浮かぶ。ついに一回、ヤったらどーなんだとか考えた俺は、流石にここまで連想するのはどーなんだよ!と顔を真っ赤に火照らせながら洗面所で顔を洗って荒く拭う。生温い水が頬を伝い、少し気持ち悪い。この水を温めたのはこの天気?それとも俺の顔に集まった熱?




この感情が恋の伏線とは誰が思ったのだろう



<この感情の延長線>





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