そこに君はいたんだ
寂れた公園に佇む長身の男性は、一人、バスケットボールでダムダムとドリブルをしていた。
冬とはいえ、スーツの上着を脱いだ状況でうっすらと汗をかくその姿を見るに、数十分はここでバスケをしていたのだろう。
長い睫毛と綺麗な金髪には少し汗が滴る。
あぁ邪魔くさいッスねぇと前髪をクシャリと掻き上げたその時、彼の視界におかしなモノがはいってきた。
『うわああああああああああああっ!!!!』
少女。泣いてる少女。
その少女は、大声で泣きながら公園に走ってきて。自分と同い年…23ぐらいだろうか。そんないい年した少女が、走り疲れた足を降り動かしながらこちらへ向かってきて。
もうそろそろ青年とぶつかるだろうに、彼女は彼の存在に気付いていないらしくて、少女は案の定ドンッと青年の胸にぶつかってしまう。
「おわっ…ちょ…大丈夫ッスか!?」
青年は流石にこちらへぶつかってくるとは思っていなかったらしく、あわあわと慌てながら少女に問いかける。慌て過ぎて、俺汗臭いっすよ!?と意味もない言葉を発してまた慌てる。
と、そこで彼は気付く。
彼女を、自分は知っている。
はっきりとした目鼻立ちに肩より幾らか長い茶髪に編み込み、エクステを身に付けた彼女。
例え服が制服でなくなっていても、あの綺麗な濃い翠の瞳が赤く充血していても。
わかる。わかるんだ。彼女は……
「霊華っち…ッスか?」
『っあ…涼太君………っ』
彼の呼び掛けに嗚咽を混じらせながら名前を呼ぶことで答えた彼女は、彼の腕の中で返事の直後にカクンと体を折らせて眠ってしまう。
……これはどういうシチュエーションなんだ。
彼はうーんと少々考えた後に彼女を優しく抱き抱え、取りあえずはトコトコと帰路を辿ることにした。
これが、黄瀬涼太と藍野霊華の、再会である。
<そこに君はいたんだ>
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