わからなかった



霊華っちがやって来た。
自然と上ずる声、はね上がる鼓動の示す意味を、俺はまだ知らない。


「とりあえず、霊華っちはこの部屋を使って下さいっす!!」


そう言って、1つの客間へ彼女を案内する。
普段は青峰っちやら黒子っちやら、皆とどんちゃん騒ぎした後で泊まる人達用の部屋だけど、まあいいや。
通した部屋をきょろきょろと眺める霊華っちはなんだか小動物みたいで可愛い。
服装も、梅雨の季節とはいえ雨で少し寒い今日の気温に合わせて少しもふもふしてて一層動物っぽく見えてなおさらその意識は高まる。
ここで気付く


……おい俺、お前何考えてんの?


見るだけで色々連想して可愛いって思うとか
沢山の女の子に囲まれて育った学生時代には抱かなかったはずだ
これは、なんだ?


「…た君、……ねえ…りょ………涼太君っ?」


霊華っちの声で現実に帰る
まあこの思いは、彼女との生活の中で調べていけばいいか、と思考を止めることにした


「ごめんっす、ちょっとぼーっとしてて…」

「そっかあ…過労とかはダメだよ?

にしても…凄い広いんだね……
あたし1人で使うにももったいない位だよ…」

おずおずと俺の顔を見上げる 霊華っち。
……あーヤバイ。なんかドキドキする。
ホント何だよこれ

気持ちを抑え込んで抑え込んで





涼太君の通してくれた部屋は、私1人で使うには広すぎるほど大きな部屋だった。
客間、とは言ってたけれど、これは目測でも4・5人泊まれる広さに相当する。
そんな広さであっても涼太君の匂いがする。
それだけで何だか安心している自分がいるのがおかしい。
こんな変態だったっけな。

にしてもこの広さ
なんというか、申し訳ないような……

その意を伝えようと彼の顔を見上げると、何だか難しい顔をして考え事をしてて、声をかけても反応しなかった
ようやく反応したと思えば、今度はふっと顔を伏せちゃうし
そのとたん、きゅうう、と音をたてて心が痛くなった
…迷惑だったのかな
嫌われちゃったのかな
そうだよね、フィーリングで、いきなり同棲を頼むような女、嫌わない方が、変に思わない方がおかしいよね




考えが読めるのだろうか、涼太君がバッとこちらを向いて、そんなことないっす!!と否定される。
じゃあ、一体何なんだと問いたくなるけど
またはぐらかされるのがオチだ
だから、何も言わない
代わりに


「ありがとう」


少し遅れたお礼を述べた






俺には
あたしには

この気持ちが何なのか

<わからなかった>

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