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  自己紹介、してみましょうか

入学式の翌日。
といえば大体恒例行事がある。
各地からこの学校へ訪れた新入生の多くが早く打ち解けるために行われる、「自己紹介」とかいうヤツである。


担任のドSめがn…日向先生が順番に前に出ろーという言葉に従い、まずは一人の男子生徒が教壇へ立つ。赤と黄の双眸をパッチリ開いた、何となく高貴な青年。あ、あの人あれじゃん。今朝手帳拾ってくれた赤髪君。

「赤司征十郎。バスケ部主将だ。よろしく」

赤髪君もとい赤司君は必要事項のみを述べてすぐに教壇から降りる。そして椅子を音もなく引き、座ってまた前を見つめる。それだけなのに彼から溢れる異様なオーラには皆が気付いただろう。


そんな彼、赤司君だが、とにかく凄かった。なにしろ入学翌日にはバスケ部主将就任、学年首席入学のスーパーマンで。容姿もそこそこ…をはるかに越えた美少年。
その赤い少し長めの髪は、女のあたしが見てもサラサラで、光が当たると綺麗に光ってて。ぶっちゃけどんなトリートメント使ってるんだよって聞きたい。それでいてあのオッドアイ&イケメンフェイスだ。女の子の間では神々しいとまで囁かれ、ファンクラブも出来たらしい。


そんなイケメン赤司君の様子にキャーキャー黄色い声をあげる女の子達を尻目に、今度はあたしの前の席の男の子が教壇に立つ。あ、あのガングロは……あれか。赤司君とぶつかったあとの入学式の昼寝仲間か。
ヤツはヤツで頭をポリポリかきながら、もったりとしたスピードで口を開く

「青峰大輝。えーっとめんどくせぇな…好きな芸能人は堀北マイちゃん。基本巨乳だな巨乳。あとは…俺もバスケ部員。っつーことで一年間よろしく頼むぜ?」

かったるそうに自らを紹介して、足をずるずる引きずるようにしてだらだらと席へと帰っていく。
…まさか自己紹介で巨乳巨乳と連呼する輩を見ることになろうとは思いもしなかった。しかしこれまた引いた様子のない女の子達。男子女子共にクスクス笑いながら青峰君は迎えられていく。クラス独特の、柔らかい雰囲気に包まれてゆく。

ちなみに赤司君とは違えど青峰君だってガングロだけど背は高いし顔もいい方だ。当然女子人気は高そうだ。
青峰君は先程の様子からしてクラスの中心的な人気者になりそうだなぁ……なんというか、バスケ部ってだけで人気が高い気がしないでもない。


そんな青峰君は、席に着く前、後ろに座るあたしにやっと気付いたのか、ニッと笑って見せ、少しドキリとした。
彼は口パクで、『バカすんじゃねーぞ』とありがたいことに言ってきて。何かな、あたしのこと気を使ってる?


『ありがと』とあたしも口パクで返し、教壇に立つ。


人の目。目。目。総勢30人のクラスメートの視線はあたしに集まってるわけで、多少は緊張する。
『バカすんじゃねーぞ』わかってるよ。
青峰君の言葉で少しだけ静かになった胸を片手で押さえ、あたしは自己紹介を始めた。


あたしの始めた自己紹介に、クラスメートは多少ザワザワし始めた。
あたしは今ちゃんと声が出ない。だから黒板にカリカリと自己紹介の文章を書き込んでいく。
読みやすいように、丁寧に、気持ちが伝わるように。


『藍野霊華です。中三の頃訳あって上手く声が出せなくなり、今は主に筆談でしゃべってます。日々の生活で色々迷惑をかけることもあると思いますけど、よろしくです。中三まではバスケしてましたけど、今は休止している状態です。いつか、またやりたいです。』

伝えたいことを黒板に書き終えて、あたしはペコッとお辞儀をした。クラスメートからパチパチといくつもの拍手を貰う。みんな、笑顔であたしを迎えてくれてる。口パクでよろしくって、言ってくれてる子もいた。あ…あたしここにいていいんだ。
嬉しくって、少しだけ涙腺が緩んだ。


席に着くと、青峰君がすぐさま話しかけてきた。

「それでオメェメモ帳なんかで筆談してたのな!!
あと、うまく自己紹介できてんじゃねえか」

彼はあたしがあの日筆談で話したことが疑問だったらしく、スッキリとした顔であたしを見てきた。
そして「うまく自己紹介できたな」というと共に笑顔でわしゃわしゃ頭を撫でてきて。彼は背が高いから、あたしはグリグリ下へ少し押されるかんじもして、ちょっと痛かった。

『ありがと、改めて、よろしく青峰君!!』

そうメモ帳に走り書きして見せると、青峰君は

「おうっ!!よろしくな霊華。あー…あと俺のこと、青峰君じゃなくて大輝でいいから!」

そういって笑った彼はまるで、



太陽のような、大きな光をたたえていたんだ。




<自己紹介、してみましょうか>





 
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