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  僕らは知らない



光の速さでバスケ部マネージャー就任が決定してしまった。赤司君から説明を受けなければいけないし、やることは沢山ある。だが赤司君に言われた

「……お前らまずは着替えろ」

言われて思い出した今の状態。
びしょ濡れの服のあたしに、あたしを担いでこれまた濡れてる大輝君。
……着替えずして何を始めるのか。
とりあえず大輝君以外には席を外してもらい、カーテンを挟んで着替えることにした。だが

(あっ………服がない…)

ブレザーもカッターも、果てにはジャージもずぶ濡れなあたしに着るものなんてない。
どうしよう。不安と焦りで無駄にキョロキョロしてしまう。


「ほれ、これ着ろ」


声と共にバサッと向こうのカーテンから何か青い固まりが飛んできた。
広げるとそれはジャージだった。青を基調としたシンプルなデザイン。これは男子用の学校指定ジャージだと一目でわかる。
しかもサイズがサイズだった。XXLなんて、こんなサイズ……

(これ……大輝君のジャージじゃ…)


ぶっきらぼうだけど感じた彼の優しさに少し表情が緩む。いい友達を持ったな、と感じた。



さて、いざ着てみるとだぼだぼで、袖のところも長くて余るし、下もスカートがほぼ隠れそうな状態になってしまった。
あたしはチビって訳じゃないんだけどな…。
あたしが動きを止めたのを見計らって、カーテンがシャッと音を立てて引かれる。
カーテンの先には、タンクトップとスラックス姿の大輝君が立っていた。

普段ブレザー等々に覆われて見えないけれどバスケ部で鍛えているだけあって、細く見えてきちんと筋肉もついていて、綺麗。
しかもタオルで湿った頭を無造作に拭いている様子は、とても様になっていて、思わず見惚れた。
カッコいい、そう思った。
……なにぼーっと見てるのよあたし。
少しだけ顔が熱くなった。胸がドキドキした。目線が離せなかった。
心に暖かい何かが浮かんできた気がする。
けれど、これが何なのかあたしはまだ知らない。








「おー終わっ…………」

言葉が途中で止まった。続きの言葉を紡ごうとするけれど、ぱくぱくと口が動くだけだ。
なんつーか…すっげえ、すっげえ。
すっげえ以外の言葉でエロいしか出てこない俺の語彙力を恨む。ボキャブラリー無さすぎだろ。
長すぎて余ってしまっている袖をたぐって袖口から出てきてる小さな手とか、ほぼロンT化してジャージしか着てないかんじにしか見えない足元とか、足の細さとか、あと、あと……
俺のジャージではあるけれど、凄い似合いすぎて何とも言えなくなる。
なにこいつ。
いや、それ以前に…


(何考えてんだよ俺ええええええええええええええええ)



「えっ…と、あの、大輝君…?」

霊華がおずおずとこちらを向くその視線は上目使い。なんだこら、ドキドキするぞ。
心臓がバクバク鳴ってて、痛い。顔に熱が集まっていく。
俺は霊華に何を感じているんだ?



「もういいっすか〜?」

「きゃあああああああ霊華ちゃん可愛い!!」

「あっれ、赤ちん、顔真っ赤っかー」


部屋へ入ってきたカラフル野郎どもへの対処によって、俺の疑問は後回しにされることとなる。



<僕らは知らない>




 
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