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  疑問の帝王

―青峰side―

メール送信完了の合図である電子音を確認して、スマホをブレザーに突っ込む。
薬やベッドに囲まれた薬品臭いこの部屋は、ひどく静かだ。電子音が消えゆくと尚更虚しく感じる気がする。
この部屋に響くのは未だに霊華の荒い息遣いのみ。ゼエゼエと不規則に聴こえる音と俺の心臓はシンクロでもしているのか。お互いに呼応しているかのようにバクバクと鳴り響く。



メールをしたし、委員会やらなんやらの予定がないはずのアイツらならすぐに来てくれると信じている。でも、それでも不安は拭えなくて。
今俺だけに出来ることをしてやることにしたんだ。

俺だけに出来ること。
そのために椅子をベッドの横に据え、そこに俺は腰掛ける。ギイと軋む椅子。
ここでコイツを見守るつもりだったけれど、何の気なしに俺は霊華の手を握っていた。無自覚というのは恐ろしいもんだと思う。さっきのもそうだけど。


霊華の手は柔らかくて、細くて、冷えてて、優しかった。





―other side―


「「「……え」」」

保健室前に終結したカラフル集団は、室内の様子に思わず動揺を隠せなかった。
あの青峰が、あの青峰がメールを送ってくるものだから一大事とは思っていたがこれは…

「入りにくいな」

緑頭の眼鏡男、緑間真太郎が口を開く。
一同も同意見だった、それほど率直な感想だった。
女子に向けて、あんな姿勢でいる青峰を見てどう反応しろと、部屋に突入しろというんだ。
心配そうな視線でベッドの上の女子に眼差しを向ける青峰。みな不思議だし意外だしで動けなかった。
とりあえずは少し様子を見てから突入…と思っていた矢先


「……あれ?赤司っちどーしたんっすか?」


カラフルはみな「どうしたものか」と顔を見合わせていたというのに、カラフルから赤が抜け出した。そして勢いよくガラリと、扉を開け放った。



いつもの彼なら、赤司征十郎なら
冷静に場を見極める彼ならこんなタイミングで自ら部屋に突っ込むなんてことはないだろうに
この行動に驚いたのはカラフル集団だけではない
彼、赤司本人も



(……僕はなんでこんなことをしたんだ?)



<疑問の帝王>



 
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