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  当たった予感


明日が楽しみな土曜日。
うちの学校は基本土曜日も午前中授業があるからみんなも学校にいる。あたしも。もちろん大輝君も。

そんな本日土曜日。
ぽかぽか暖かい、陽気に包まれたいい天気。
ホントは大輝君を誘われて、屋上で日向ぼっこでもしようかなぁと思ってたけど

「……寒い。」

無理そうだ。
体から滴る冷水の雫と重たい制服はあたしの体温をぐんぐん奪っていくのがわかる。
寒い。ホント寒い。

にしてもユキ達、お買い物ごときでここまでやるかよ



つい先程まで普通の乾いた制服を脱ぎ、体育でバスケして、更衣室に着替えに行ったら、はいこれだ。
クラスの皆の視線はいかにも気の毒そう。
その原因なんて、すぐ見当がついた。
あたしの分のロッカーの前に無造作に投げ捨てられたモノ。よくよく見ればあれ、あたしの制服じゃん。ポケットからメモ帳見えてるし。
その制服はびっちょびちょに濡れてて。しかも普通の水じゃないじゃんあれ。ご丁寧に青色の色水じゃん。
うわー…イジメかよ。

んで。多分あれだよな、あのニヤニヤしてやがるのが主犯だよねー…ユキ達か。予想通り、早速か。
こちらを見てずーっとキャーキャー笑ってやがる。何が楽しいんだか。
つまりあれだよね。仲いいフリして大輝君に何かしたら鉄槌をくだしちゃうよってか。
わかってはいたけどめんどくさいことするもんだ。


「バッカよねー、あたしらの青峰に何媚び売ってんの?」

「だよねぇ、買い物の約束まで取り付けやがって何様だよってね〜」

「もーさー、ウッゼェのなー」

……女の子は威勢がよろしいのねぇ。
大輝君とのお買い物にそこまで嫉妬するか。女子高生怖いわ〜
なんだろね。いざ自分がイジメられてみると客観的に状況を見ちゃうのね。
んでもってあれだわ。悲しいとかいう気持ちはそこまで沸かないみたいで。
……前とは、変わったんだなぁあたし。



まあまずは…

「え…マジかよ何してんのよぉ?うけるんですけど笑」

冷たいけどしょうがないから制服着て出口へかう。あー体が重い。
ドアから外へ足を踏み出した、そんな時に

"ガツッ"

後ろから感じる衝撃。背中に感じる痛み。前へ傾く体。倒れて口の端が切れる。痛い。そこに加えて、投げつけられる硬い水筒。これまた痛い。赤い。赤色だ。視界が赤く染まる。

「あっ、アンタ達いい加減にしなよ!!」

小柄な女の子が声をあげる。菜緒ちゃんと蛍ちゃんだ。
あたしが本気で信用してる友達。席がお隣でなかよくなったんだよね。ホントは二人ともおとなしいのに、あたしなんかのためにそんな危険なことしちゃだめじゃんよ


後ろで聞こえる黙れよブスって嘲笑う下品な声が聞こえる。お前らこそ黙れ。バカみたい。菜緒ちゃん、蛍ちゃん、ごめんね。

二人はまだあおい達にあたしの事を怒鳴ろうとしてくれるけれど、これ以上言えばあちらにも被害が及びかねない。
さっさと立ち上がり教室へと歩みを進める。
幸いなことにまだ男子は授業も終わってないから、早く荷物を取って、かえろう。
もうこれ以上…友達が傷つけられるのを防ぐために。


というのがここまでのあらすじ。
とにかく早く帰ろうと重い体をゆり動かす。
水が傷口に入って染みて、じわじわ痛みがくるのに加え、視界も赤いのでバランスが取りづらく歩きにくい。ひょこひょこと、左右によろめきながら歩くので精一杯。今のあたしの歩き方は、多分非常に滑稽だろう。
そんな歩き方で四苦八苦しつつやっとこさ教室への廊下を50m位進んだ時。
あたしを見て廊下に突っ立ってる巨大な壁。視界が赤い中でもわかるあのガングロ長身男はおそらく

「霊華……!?」

大輝君でした。はいビンゴー。
大輝君はあたしの名前を呼んだ直後に一気に距離を縮めてきて。彼の顔は、眉間にひどくシワがよってるし、顔は歪んでるしでまあ酷いもので。
なにしてんだよバカとか、早く保健室行くぞとか言ってあたしをおぶって走り出す。
…………あーぁあ。菜緒ちゃんと蛍ちゃんにプラスで大輝君にも、迷惑、かけちゃったなぁ。

あたしの意識は急に微睡み始め、視界の赤は、歪み始めた。



<当たった予感>







 
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