短篇 | ナノ
5



***


「む、無理だってーーー!!!」

 自分の叫び声につられ、ロゼッタは飛び起きた。
 はぁはぁと肩で息をしながら、涙目で辺りを見渡すと五人の姿はない。いるのはロゼッタだけで、離宮の自室のベッドの上だった。
 しばらくは何が起きたのか理解出来なかったロゼッタだったが、数分後にはようやく今までのは全て夢だったのだと気付いた。

「私ってば、なんで、あんな夢を……!」

 思い出すだけでも恥ずかしさの余り全身から湯気が出そうな程真っ赤になった。妙にリアルに思い出せるのだ。熱い視線も、唇の感触も、触れられる体温も。親しい男性達に囲まれ告白され、愛される夢なんて恥ずかしさ込み上げてこない。
 なんてはしたない夢を、と頭をブンブンと振りながら、忘れさせてくれとロゼッタはベッドの上で悶える。恋人もいない彼女にしてみれば、すごく刺激的な夢だった。

「これは……?」

 ふと、ベッドの下を見るとロゼッタの靴がTの形を描いたまま置かれていた。そしてその瞬間昨夜の出来事を思い出す。これは昨夜、ロゼッタがハロウィンの言い伝えを試したままだからだ。
 そう、ラナに教わった、将来の夫が夢見れるというハロウィンの言い伝えを。

「……!」

 あの言い伝えが本当だったのかは結局は分からない。しかし、あんな言い伝えを試してしまったが故に見てしまった夢。
 ロゼッタはそれ以降、遊びで言い伝えを試す様な事はなくなったらしい。


End

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