アスペラル | ナノ
13


「な、何でお前が……?!」

 彼女は野宿場所にシリル、アルブレヒトと共にいたはず。リカードも驚きを隠せぬ様だが、相手のルデルト家の男達も標的のいきなりの出現に驚いている様だった。
 だが、そんな彼らを無視して、ロゼッタは毅然とした態度でリカードの前に立つ。向かい合うのはルデルト家の男達だ。

「私を探していたなら、リカードは関係ないでしょう?!」

 あまり威力は期待出来ないが、ロゼッタは男達を睨んだ。

 それから数秒後、ようやくロゼッタが来た方向からアルブレヒトも現われた。珍しく慌てている。それは勿論ロゼッタが敵地に突っ込んでいったからだ。

「ロゼッタ様……!」

「アルまで……どうしてお前らがここにいる?!」

 本当はリカードが聞きたい事はそうじゃない。正確には何故出てきた、だ。
 こちらに来る前に分かっていたはずだ。リカードがルデルト家に囲まれている事を。ルデルト家だと分からなかったとしても、異常な空気だとは分かるだろう。

「お前らは馬鹿か?!こんな時に来る奴がいるか!!」

 多少戦えるアルブレヒトならともかく、戦えもしないロゼッタが出てくるのは自殺行為。彼の怒号は主にロゼッタへ向けられていた。
 しかし、ロゼッタは腰に手を当てて眉を寄せる。水色の瞳は、今度はリカードを写していた。

「馬鹿はあんたでしょ!!何で誰も呼ばないで一人で戦ってるのよ?!」

 怒鳴ったリカードに負けず劣らずの声でロゼッタは反論する。

「なっ……?!」

 勝手に来た挙げ句声を張り上げるロゼッタに、リカードは額に青筋を浮かべた。

「馬鹿とは何だ馬鹿とは!!戦えないお前が来た所で足手纏いだ!!この馬鹿が!!」

「あんただって私のこと馬鹿って言うじゃない!!こんなに囲まれてるくせに……!!」

 そう今彼らは敵に囲まれている。囲まれているにも関わらず、二人は真ん中で怒鳴り合っているのだ。アルブレヒトもルデルト家の者も、唖然と二人を見ている。この空気に誰もが入るのを躊躇していた。
 だが、このままでいるわけにもいかない。二人をアルブレヒトが呼んだ。

「ロゼッタ様、リカード。喧嘩は止める。今、囲まれてる」

 そこで二人はようやく我に返った。そして今、喧嘩をしている場合ではない事に気付いた。
 リカードはごほんっと咳払いを一つする。何事も無かった様に表情を仏頂面に戻すと、アルブレヒトに向き直った。

「……アル、援護を頼む。お前は前衛を減らせ。魔術師は俺が何とかする」

「うむ」

 こくりと頷きアルブレヒトは腰にある双剣を抜いた。警戒の面持ちで、彼はルデルト家に向かい直る。

「私は?!」

 リカードはアルブレヒトにしか行動を促していない。ロゼッタは何をすれば良いのか分からずリカードを見るが、彼は眉間に皺を寄せる。

「邪魔だ。下がってろ」

 ロゼッタに向けられたのは、たったその二言。しかも、邪魔者扱いの上に命令口調であった。
 これにはロゼッタも頭に来るが、彼女自身も自分に出来る事があまりない事を知っている。反論したかったが、反論の言葉が出てこなかった。

 そうこうしているうちに、再び戦いが始まった。

 アルブレヒトはリカードに言われた通り、剣などの武器を持った男達を相手にしていく。体格差を物ともせず、持ち前の身軽さでひらりと避けては、剣を振るっていた。
 その間、リカードは男達を避け、後ろにいる魔術師達へと向かう。武器を持った男達はアルブレヒトが相手をしている為、難なくリカードは越えていった。

 近距離に持ち込んでしまえば、魔術師など怖くはない。リカードもまた剣を振り上げた。


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