バルバッド編



ナマエの必死さが伝わったのか、ジンは用を勝手にすればいいが、なぜその器を持っていこうとするのかを尋ねると、ナマエはこれでも自分は女だし、誰もいない所だとしてもそこに水溜りを作り出すのはちょっとと答える。
そんなナマエの返答に全てを理解したジンは先ほどまでの余裕そうな顔つきから一変して顔は引き攣り、明らかな焦りを混じらせている。


「う、器にする気か」
「そのつもりだし」
「その器は私の化身でもある。お前にも分かりやすくいえば一心同体。器は私自身でもある」
「なに、花瓶に取りついた幽霊とかいうやつ?」
「いや、そうではない。って、歩き出すでない!!」
「無理ですって!このままじゃ私いい年して出しちゃいますって!!」
「せめて器を置いて行け!」
「ムリムリムリ。今更違う入れ物を探す余裕なんてないし」
「ちょっと、本当にやめてってば!」
「もう決めちゃったから!私はコレにするって私決めちゃったから!そっちがあきらめてよ」
「私の化身が危機に陥っているのに、私が諦められるわけないでしょうが!!」


ナマエが気が付いているのかいないのか、今はそんな事でうでもいいのか分からないが、いつしか二メートルくらいになっているジンもナマエの持っていた花瓶に手をかけて引っ張り合いが始まっていた。
もちろん互いに必死だ。


「手を離さぬか!」
「いやそっちが離せばいいし!」
「他の入れ物でも探せばいいではないか!」
「私の決意はそう簡単には揺るがないってか、そんな余裕ない!」
「強く引っ張るな馬鹿者が!」
「そっちだって強いし!ちょっ、お腹に力入れたくないのに、離せ!」
「そうじゃ、私が違うのを探して来てやろう」
「その時間もおしい」
「すぐじゃ!」
「よーし、なら手を放して今すぐ探して持ってきて」
「手を放したその隙にするつもりじゃな。その手に乗るわけあるまい!」
「だーしつこいし!!」
「なら諦めることじゃな」
「だれが諦め…あ」
「……え?あって、言った?」


グッと固まったナマエと呟くように出たナマエの言葉に、ジンはえ?もしかして?という考えが頭の中で巡り、少し引き気味で固まった。


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