幼少期編


「「なっ!!えええぇぇぇえぇえ!!!!」」



これは、アリババとカシムの二人が叫び声を上げる2分前へと遡る。
感動の別れとは言い難いが、別れを直前と感じ取ったことから別れを惜しみながら最後の言葉を交わしている最中にそれは突然起こった。


「アリババ、カシム」
「何?」
「なんだよ」
「何ていうか、私がここに来て出会ったのが何だかんだで二人でよかったよ」
「……ナマエさん」
「んで、そんな事言うんだよ」
「いやさ、なんとなぁく思い返していたんだけどさ、一週間っていう短い期間だったけど、アリババとカシムと意味のない事もやったことは何ていうか、うん。アレだね。悪くなかったなぁって」
「うぅっ。ナマエさんのバカァ!」
「えぇっ!!ここで貶されるとは予想外なんですけどぉ!!泣くなよアリババ、そしてカシム痛いから!腕殴ってますから!!」
「だから、そんな似合わない事いうなよ!最後までふざけていろよ!それがナマエだろ!!」
「ちょっ、それ語弊だし!全くもって侵害だし!ふざけるのが当たり前っておかしくね?」


泣き笑いしながら、いつもの騒がしい三人に戻りつつある空気にどこか笑みが零れ始めた。
そして、ナマエは二人の頭に手を乗せると、言葉を続けた。


「短かったけど楽しかった。出来る限り、忘れないから、二人も出来ればこの数日を忘れないでくれると嬉しい。だから私の事……」


私の事忘れるなよと続く言葉は、空から降ってきた巨大なタライにより強制的に終了させられた。
まさに、バァーーンと耳を塞ぎたくなるほど大きな音が鳴り響くと同時にナマエの意識を一瞬で奪う事とアリババとカシムを驚きと恐怖へと導くと冒頭の叫び声を上げたのだ。
意識が無い筈のナマエの口が僅かに動くと、絶対殴るという言葉が零れたが、驚いている二人には届かず、それがナマエのこの世界での最後での言葉になった事は誰も知らない。
白目を向いたナマエの体が魔方陣もなく透けていくのを目のあたりにして、本当に別世界から来て帰るのだと実感するが、きっとまた会えると信じて手を強く握り、先ほどまでナマエが居た場所を見つめていた。


「なぁ、アリババ」
「何?」
「俺たち…友達だよな」
「あたりまえだろ!」
「ははっ」
「ナマエも友達だからな」
「そうだな」


こうして二人の物語は進んでいく。



END_

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