幼少期編


ナマエがこの世界に来て7日目。
つまり、帰れる日という事で、ここでの最終日。
ナマエはここで初めて朝早く、まだ目覚めていないアリババとカシムとマリアムの元へとやってきた。
おはよーうございます。恒例の時間になりました。おや、まだ寝ている模様ですと小声で呟きながら拳をマイクに見立てながら三人が並んで寝ている横に立つと、一気に息を吸い込むと全てを吐き出すように言い切った。


「おはようございまぁぁあぁぁぁすぅ!!今日はいい天気ですが、皆さんに伝えたいことがあるんですけどぉぉぉぉ」


もちろん近所迷惑も甚だしい。
その被害者はもちろん一番近くっていうより、真横で聞く羽目になった三人だ。
突然の大声に驚きを隠せず目を覚ました。
マリアムは驚きながら耳を塞ぎ少しクラクラしている。
アリババは何が起きたのかいまいち理解が出来ていないのか「え?え?」とキョロキョロしているが、カシムだけはいち早く状況を把握したのか、寝起きも相まって、何割増しだろうか、目つきが鋭いままナマエに朝から迷惑だ!用があるなら普通に声をかけろバカと怒鳴り返してきた。
まさに三者三様とはこのことだろう。

そんな三人におかまいなしのナマエは、だから伝えなきゃならないことがあるって言ったじゃん。ねぇ?とマリアムの頭に手をのせてグリグリと左右に撫でているが、少し力が籠っているのか、頭も一緒に左右に揺れているせいで、まったく撫でている感がない。
やっと目が覚めたのか、回り始めた頭でナマエなら要件があってもギリギリになってそう言えば言い忘れていたのだけどさぁとか言いそうなのに、こんな朝早くから要件を伝える事にどこか違和感を感じたカシムは、眉を寄せながら今ではやめて目が回っちゃうと言うアリババも加えた二人の頭をグリグリしているナマエを見つめるが、その視線を何と勘違いしたのかナマエは大丈夫だって朝トイレに行った後ちゃんと手は洗っているからと言えば、直ぐに違うと否定された。


余談ではあるが、ナマエが来てからカシムのツッコミ力はアリババよりも確実に急成長を遂げていたりする。そして、アリババとカシムほどではないがマリアムとも仲はいい。


このままでは意味のない繰り返しだとその場の全員がともに思ったのか、少し沈黙が出来ると、ナマエが喋りだした。


「でさ、私伝えたいことあるって言ったじゃん?聞いてくれる?」
「あ、うん。何?」
「くだらない事じゃないだろうな?」
「もうお兄ちゃん、ちゃんと聞いてあげようよ」
「私、此処のスラムに居るの今日までだから」


まるで、ちょっとそこの自販機に飲み物買ってくるから的なトーンで軽く言い切ったナマエだった。


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