幼少期編


「あんな最低な奴と同じなんだよ……」


拳を強く握りながら吐き捨てるように言ったその言葉にナマエはイカからカシムへと視線を向けると面倒くさそうに首を掻きながらあのなカシムと呟くとカシムはナマエを見た。


「確かにお前の父かもしれないけど、捨てたんだろ?」
「………」
「(母は知らんが)父を、マリアム以外の家族を、親を今さっき捨てたんだろ?」
「そうだよっ」
「ならさ、何故また拾おうとしているんだよ」
「っ!!」
「捨てたなら、前に進めよ」
「分かっている」
「捨てたものが本当は大切だったと気づいたなら、その気が付いた時に拾いに行けよ。あと、マリアムの父は今からカシムお前が担っていくんだからさ」


ナマエの言葉に眉を寄せながらも分かっている。そのつもりだと言い返すが、それでもカシムの目は不安に揺れていた。
そんなカシムを見ると、ナマエはため息を吐いて立ち上がるとカシムの下を向き続けているその頭をグッと押さえつけるように手を乗せると言葉を続けた。


「父がアレだから同じ血の繋がった人がアレになるなんて単純すぎるぞ」
「だけど、俺は、さっきナマエがいなければアイツを刺し殺していた」
「そうだな。未遂で終わってラッキーだったね」
「俺には最低な血が、確かにある……」
「だぁぁ、こんなにナマエさんが気にするなって言っているのに、しつこいし。新聞勧誘のおっちゃんか、水廻りの汚れか何かですかお前は!」
「……は?」
「よしカシム、こんな話をしてやろう。私の知り合いには父であり母である一人二役を担っている化け物がいるが、その子供は化け物になんかならずに普通の良い子供だし、すぐに弾をぶっ飛ばすチンピラ役人トップが父でも娘は何も飛ばしてないぞ。ある兄弟なんて優しい姉なのに似ても似ないにも程があるくらい腹の中は真っ黒なドSだし…クソ野郎がいつか覚えて……ヴ、ヴン。だからアレだ。どう生きるかで、どの背中を見つめるかで、どんな自分になって行くかは決まるんだよ」


分かったか?と問いかけるナマエにカシムは歯を食いしばり、口を閉ざしたカシムの姿を、目を見てからナマエは少しでも分かったならイカ買いに行くぞぉ。私お前のせいでスッカラカンになったんだから、イカ奢ってもらうからな!ニィーっと笑って歩いて行くナマエの後をようやく歩き出したカシムは、目の前の背中も少しは見つめてもいいかもしれないと、少しだけ思ったらしい。


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