幼少期編


殺気を込めて言い放ったせいもあるだろうが、カシム父は息を詰まらせるがすぐに金を取ると笑いながら口を開くと。


「お前はこの金で俺のガキ共を買うって訳か?」
「そんな大層な話になっちゃうの?えっと、うん。まぁ、簡単に言うとそうじゃね?」
「簡単も何もねぇだろうが。買うという事は二人があんたの奴隷になるということだろうが」
「!?」
「まぁ、この二人にしたら十分すぎる金になっているから構わねぇがな。ははっ」
「違うし。私が買うのはあんたが持っている見えない籠の鍵さ。こいつらは自由になるんだよ」
「ガキが自由になって何が出来る」
「バカじゃねぇの?子供が本気になった時は何でも出来ること知らないの?」
「(減らず口を)…スラムでしか生きられないガキでもか?」
「当たり前じゃん。それに、男は下の毛が生えてくれば十分一人立ちしていくんだよ。そこに縛っているものなんて、自分にとって大切な約束だけでいい。だから余計なものはいらないから、さっさとその金持って出て行ってくれねぇかな?もうお前の財産は何もないんだから」


早くしてくれないと手元が狂っちゃうかもしれないよとナマエが木刀を前に持っていくと、カシム父は一度も振り返ることもなく歩いて行った。
そんな自分の父の姿にカシムは同じ血が流れているんだというだけで、何だか言い表せない気持ちになり、土を握りしめた。


「……ナマエ」
「どうしたよカシム。いつまで尻をついたまんまでいるのさ。ほらナマエさんのイカが台無しになったから新しいイカを買いに行くから立ってよ。あ…やべぇな。お金全部上げちゃったからイカ代がないや」


何か言いたそうなカシムだが、ナマエは相変わらずでどうしようと地面に刺さっているイカを見つめて、コレ食べられるかな?アウトかな?いやでも、地面に付いているのは串だけだからイカはセーフかな?でも暴れたから砂埃がついてるかもなぁとブツブツ呟いていた。


「なぁナマエ」
「んー?」
「俺、あいつと同じ血が流れているんだ」


悔しそうに吐き捨てるように呟いたカシムの言葉にナマエの体は未だにイカを見つめたままの体制だが、目線は一瞬だけカシムを見つめてからイカへと戻すと、そーだねと相槌をうった。


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