夏といえば6
−手持ち花火−
「イヤです」
「いいから来いって」
名前と三郎は、名前の家の玄関で言い争っていた。
「本当、今回は何が何でも、本気で、全力で拒否します」
「夏の醍醐味だろう」
「醍醐味だろうが、何だろうが関係ありません!」
「なぁ、名前。何がそんなにイヤなんだよ」
「分かりませんか?小松田さんですよ。こ・ま・つ・だ・さ・ん!」
「・・・」
「普段はああいう人だと割り切っていますし、個性だと思っています。別に小松田さんが、嫌いなわけではありませんよ。ですが、これとそれとは話が別になるのですよ。鉢屋さんは考えましたか?手持ち花火と小松田さんという物質をぶつけた際に起こる化学反応を。その行く末と危険性を!」
「・・・・・」
「その苦々しい顔。それですよ、私が行きたくない理由は」
「そう、だな。でも、今回は利吉さんもいるし、な?」
「そうですね。今回は珍しくも山田利吉も参加してくれていますが、例え運動、反射神経を兼ね添えている彼が気を配っていようとも、カバーしきれないものはいくらでも存在するものですよ」
「・・・・・・・」
そのころ外では-----
「ロウソクと花火の用意出来たよ〜」
「小松田君。その2つを私に渡して、小松田君は名前さんでも呼びに行って下さい」
「それなら、鉢屋君が呼びに行ってくれているから大丈夫」
「なら、それだけでも私に渡してください」
「もう、そんなに花火とか持ちたいの?別に構わないけど・・・・・はい、どうぞ」
「あ、ありがとう(口元が引き攣っていないだろうな。だがこれで、彼は危険なものは持っていない。ん?)っうわぁ!?」
「うひゃっ!!」
利吉が一息吐いた瞬間。
ヒュンヒュンと音を立てて、次々と発射されていくロケット花火。
何の呪いかは説明できでないが、あえてロケット花火は人方へと飛んで行った。
「誰だ!ロケット花火を入れたのぉ!?」
「どの花火にしたらいいのか迷ったけど、僕じゃな、い、よ!うわっ」
「俺でも、ないっの、だ!!」
「俺も違、う、よっと!」
花火を避けながらも原因を聞くが、みなとして違うと言う。
「ごめんなさーい!僕が楽しいかもって持ってきちゃいました。本当にゴメンなさい」
少し涙目になって言われれば、責めるにも責めきれない。
そんな光景1人で戻ってきた三郎は、溜息を吐いて名前が来ない訳だと思いながら見つめていた。
(END)
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