嘘から出た真




「俺と恋人ごっこせん?」




今日は24日の終業式

その日、私は持っていた
分厚い教科書を全て落とした。





いやいやいやいや、どういうことよ?

教科書は全部自分の足に命中したけど、
痛みなんて感じている暇なんてないほど、
私の中は驚きでいっぱいだった。



自分の好きな人からこんなことを
しかも急に言われたら
誰だって間違いなく動揺するだろう。


「…name、足痛くなかと?」
『えっあ、痛いよ!いや、それより、ええ?!どういうこと?!』


そんなに焦られても困るんだけど、と
右手では頭をポリポリ掻いて、
左手は何やらポケットをあさっていた。


「ほら、これ。」


そう言って千歳がポケットから
取り出したのは2枚の小さなチケットだった。


『え、えええぇええ?!』
「はは、驚きすぎたい。」
『だだだだって!それ…!』



夢の国のチケットじゃないですかぁー!



「懸賞で当たったばってん、一緒に行く人がおらんたい。だから、一緒に行かん?」
『か、家族とかは…?』
「あー…それは、」


千歳が言うには、
最初は妹と二人で行く予定だったらしい。
だけど、両親が家族でなら
いつでも連れていってやるから、
どうせなら彼女とでも行け、と。

彼女なんていないんだと言う暇もなく
どんどん話を進められて
最終的に、お土産は大きなくまちゃんの
ぬいぐるみとお洋服をよろしく
というところまで進んでしまって、
もはや後戻りは出来ない状態になったんだとか。



そこで、クラスメイトで
仲が良い私に声をかけた、と。


『そっか。すっごく行きたい!…けど、ほら、千葉県って…遠くない?』
「その日、うちの家族もそっち方面に旅行に行くたい、同じ車に乗っていけばよかよ。」
『あぁ、なるほど。…て、え?!いいの?!』
「よかよー」
『なんか、致せり尽くせりで悪いね…。でも、うん、じゃあお言葉に甘えて!よろしくお願いします!』
「ん、」



今日、恋占いしてたら間違いなく
絶好調の結果が出てたよ、これは。

好きな人と夢の国なんて、
理想のデートそのままじゃない。

ああ、楽しみ。

『…でも、なんでそれが恋人ごっこに?』
「え?あー…。どうせ行くなら、思いっきり楽しみたいばい。恋人って設定の方が楽しかろ?親も彼女と行っとると思っとるし。」
『そ、そっか。そういえば、明日はクリスマスだしね!その方が雰囲気出るかも!』
「ん?明日じゃなかよ?」



…え?
明日じゃないの?

クリスマス=恋人と過ごす日

みたいな方程式があるじゃない。
そういう意味で恋人ごっことか
言ってるんだと思ってたんだけど…?


「12/31たい。」
『お、大晦日?!』
「予定…入っとる?」
『え?ああ、いや、大丈夫!なんとかなる…けど、』


大晦日… 12/31って…

千歳誕生日じゃねー?!!


『千歳こそいいの?その日。』
「…?何ね?大丈夫たい。」


ええー。
…自分の誕生日忘れてるタイプの人なの?!

全然私は構わないけど。

いや、むしろ好都合!


誕生日にディズ〇ーなんて!
しかもご両親は私を彼女と思ってて!
あわよくば、そのまま初詣とか
行けちゃったりしちゃうんじゃないのー?!

絶対にこのチャンスは無駄に出来ないよ!
神様、…あんまり信じてないけどありがとう!!


よーし!頑張る!頑張っちゃうからね!!







[←prev] [next→]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -