究極の選択
『ねぇねぇ、究極の選択って知ってるー?』
思いっきりクラブをしている、
レギュラー陣に大声で叫んだのは、1年生のnameちゃん。
マネージャーでもなければ、親衛隊でもなく、
その上、クラスどころか、
学年も誰ともかぶっていないという、 全くの他人。
「今...試合中なんやけど...。」
『へっ?!』
目を点にして、キョロキョロとコートを見渡したnameは
状況を理解したのか、顔がボンっと赤くなった。
「激ダサ。」
「いいじゃないですか、宍戸さん。いつものことなんですから。」
「究極の選択...今初めて知ったんでしょうね。」
あたふたしているその姿は本当に愛らしい。
試合中に水を刺されたにもかかわらず、
誰も責めないのは
もちろん、みんな彼女を狙っているから。
さぁさぁ、今日は誰が
どんなアタックをするのでしょう。
「まぁいいじゃねーかっ!試合なんていつでもできるだろ?」
負けず嫌いの岳人が、
試合を途中で放棄なんて珍しい。
『いいの...?』
「EーのEーの!ね、跡部イーよね?!」
「仕方ねーなぁ...練習は中断だ!部室へ行くぞ!」
『えへっやったー☆』
そうして、nameとR陣は部室へと入っていきます。
「んで?究極の選択がどうしたってんだ?」
『あのね!今日、クラスのこと、究極の選択をしたの!だから、みんなともやりたいなぁって!』
「えぇけど、たとえば、どんなんや?」
忍足がそう聞くと
待ってましたとばかりに、ニッコリ笑顔でこう言った。
『んじゃあ忍足くんからね。なるならどーちら!火だるまと血だるま!!』
「...ほ、ほんま究極やな。」
こんな可愛らしい女の子。
しかも、中学一年生。
言ってしまえばこの前まで
ランドセルを背負っていたのだ。
一発目からこんなに
グロテスクな質問がくるとは、誰も思っていなかった。
「アハハすっげー質問!Aー?それでどうすんのー?」
『ねぇどっち?』
「うぅ...。」
『ねーぇ?』
「どっちもイヤやけど...。」
『当たり前でしょ?究極の選択なんだから!』
「...なら、火だるま、で。」
……。
「な、なんや?」
『なんか、普通だね。もっと面白い事いってくれるのかと思った〜。』
「は、え?」
『ガッカリだなぁ...』
「えぇぇえぇええぇ?!!」
「侑士だっせぇー!」
「激ダサだぜ。」
「こんな高度技術が必要とされる遊びやったか?!究極の選択って!」
─忍足、脱落─
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