四角関係








『あー、長かったねー...』
「遅れた罰をくらわされたからな。」



そう。早く終わるはずの委員会だったのだが、
私達は遅れたので、雑用を任されてしまったのだ。



遅れたっていっても、1分くらいだよー?
ケッ。 なんなんだよー。あの先生嫌いだ。



「んじゃあ、行くか、購買。」
『うん!』



ま、いいや。
私にはプレーンオムレツが待ってるから♪


もうお昼休みになってから
時間がだいぶ経っていたから食堂の席はわりと空いていた。


私とジャッカルは
返却口に1番近い窓側の席に座ることにした。




「プレーンオムレツだったよな?」
『うん!ってか、え?なに?おごってくれんの?!』
「......今日だけな。」
『やったー!ジャッカル大好きー!あ、嘘。ブン太とさゆの次に好きー!』
「3番目かよ......、」



みーんな、大好きだけどね♪

少し経ったら、購買のおばちゃんが、
頼んでいたプレーンオムレツを2つ運んできてくれた。



『おばちゃーん、ありがと!』
「はいはい。喉につまらせんようにね。」
『はーい。』



ガキか、ってジャッカルが
呟いてたのは聞かなかったことにしよう。



『そうだ、ジャッカル。この前のデートどうだったのさー?』
「どうだったって...普通に楽しかったけども?」
『何か進展なかったの?』
「はぁまあ...。」


はぁあー?!
初デートってわけでもないんだから!
チューぐらいしろよな!!



「いいだろ、別に、なんでも。てかお前はそんなこと聞くために食堂に来たわけじゃねーだろ?どうしたんだよ?」



な。さすが、ジャッカル...
私が相談したいというのは分かっていたのか...。

んー、でもなんか言い出しにくい。




『えー...っと、明日でいいや。』
「はあ?明日?」
『うん、明日...。』
「明日はダメだ。」
『えっなんで?!!』
「俺、明日から1泊ブラジルに行くからよ。」


えっ?そうなの?
聞いてないんですけど。




『じ、じゃあ今言う!』
「おー、そうしてくれ。」
『あの...ほら、私ブン太のこと振り向かせるって言ったじゃん?』
「あぁ。」
『でも具体的に何をするかなんて、全然考えてなかったのよね...』
「うん。何か考えたのか?」
『考えた!』
「お、ぉお。なんだよ?」



ブン太の好きな人はさゆ。
つまり、私が、



『さゆみたいな人になる!』
「あ、え?」
『さゆみたいな人になるの!だってブン太はさゆが好きでしょ?』
「彼氏の目の前で、それいうか?まあ、そうだけどよ。」
『で、さゆと今一番近くにいる人いえば...』
「いえば?」
『ジャッカル!君だぁっ!』
「...だ、だからなんなんだよ?」



そう、さゆのことを
一番分かっているのはジャッカルだと思うの!


『だから、ジャッカルから見てさゆの良いところを教えて!!』
「いいけどよ...nameにもnameらしさってのがあるんだから、それをなくしちゃっていいのか?」
『だーかーら!自分らしさも失わずにさゆのいいところを取り入れていきたいの!!』
「なるほどな...。」
『ね、どんなとこが好き?!』




テーブルに両手をついて
ジャッカルに顔をグイっと近づけた。



「ち、ちけぇーよ......えー...っと、そうだな。かわいいとことか、あと...」












その時だった──────────























「お前ら何してんだよぃ?」



ブン太の声がして、振り向くと、
そこには、ブン太とさゆがいた。




「ジャッカル...name...何しているの...?い、委員会...遅いと思って探しに来たら...なに、これ?」


さゆは今にも泣き出しそうな顔で
消えそうな声を奮わせながら、そう言った。



何って...?
食堂でご飯食べながら喋ってただけだけど。


さゆの顔からして
そんなことを言ってるんじゃないんだ
ということはすぐに分かった。



私 今何してた?
本当にしゃべってただけ...だよね?


さゆのいいとこを聞こうと
椅子から立ち上がって、机に手をついて...





《「ち、ちけぇーよ......えー...っと、そうだな。かわいいとことか、あと...」》
《「ち、ちけぇーよ...」 》?!


そうだ、さゆたちが居るのは
ちょうど、私達の真後ろ。

まさか...まさか!まさか?!
キスしてたように見えたとか?!



『さゆ...これは!』


私がそういった時にはもうさゆは
走って食堂を出ていってしまっていた。


『さゆ...』
「お前最低だなっ!!!」


え......。




ブン太は今まで見たことないくらいの
鋭く冷たい目で私を睨んだ。
そう、私だけを。

そして、さゆの後を追った。


私が無理矢理したようにでもみえたのかな?

でも、もうそんなことどうでもいい。
私が感じたのはこれだけ。



嫌われた、な。ブン太にも、さゆにも。











「おい!待てよ!ブン太!!」




ジャッカルがそう叫んで
ブン太を追おうとしたけど、私はそれを止めた。


ジャッカルは今ブン太に待てって言った。
普通ならさゆを追って、仲直りするべきなのに、
ブン太を呼び止めたのは、きっと私のためなのだろう。


ジャッカルは自分のことより人のことを優先するから。




「おい?なんで止めるんだ!勘違いされたままでいいのか?!」
『.....いい。』
「は?」
『もぅ......いい、の。』
「なんでだよ!!」
『もう...いいんだよ。分かっちゃったから』



私の恋が結ばれることはないって。



「?」
『見た?あのブン太。思いっきり睨まれちゃった。』
「だから、それは勘違いされ...」
『どっちにしろ、もう無理だよ。ブン太を振り向かせるなんてさ、最初から無理な話だったんだよ。』
「name...」
『さゆは泣かしちゃうし、ジャッカルには気を遣わせちゃうし。本当、私って最低だね...!ブン太に嫌われても仕方ないや。』
「.........name...やっぱり誤解解きに行ったほうがいい。本当にこれでブン太と終わりになるぞ?」
『ジャッカル...終わりって何?私、始まりもしてないのに。』



あのね、ジャッカル。
ジャッカルが真剣に心配してくれてるのは分かってる。

でも、もうこれはこれでいいの。
ブン太を諦めるきっかけになったと思えば。


『わ、私よりジャッカルが行ったほうがいいよ!さゆ、ブン太にとられちゃうよー!』



頑張って笑ってるつもり。



「置いていけるかよ。」
『え?』
「そんな泣きそうな顔してるお前を置いていけるわけないだろ?」



笑ってるよ、私。
こんなの全然つらくないんだから。


そしたらジャッカルがハァっとため息ついた。



「あのなぁ、たしかにさゆは俺の彼女だし1番大切だよ。だけどな、お前とブン太だって俺の大切な親友なんだ。だから放っておくわけにはいかねぇだろ?」



ほら、またそういうこという。
君は優しすぎる。




『.........ぅ』



せっかく耐えてたのになぁ。



「?」
『うぅ...ふぇっ...ジャッカルー...』




泣き出した私を見て
ジャッカルは困ったように笑った。



「大丈夫だって...絶対なんとかなるから。」







結局その日の午後の授業に
さゆとブン太が現れることはなかった。










































次の日、ジャッカルは旅行で学校に来なかった。

さゆとブン太とクラスが
離れていたのが不幸中の幸いかな。

朝は思いっきり無視されたけど...。


休み時間も昼休みもずっと一人でいた。
お弁当も一人で食べた。

すると、廊下からこんな声が聞こえた。




「ねぇねぇ知ってるー?昨日のさゆとジャッカル君の話!」
「知ってる、知ってるー!あれだよね、あのnameちゃんの」




あぁ、こんなとこまで
もう噂が広がってるんだ。



「本当最低だよねー!ジャッカルくんに無理矢理せまったんでしょ?」
「前から怪しいとは思ってたけどさ、」
「さゆもジャッカルくんもかわいそうだよねー!」



何それ。
あることないこと、適当につくって。


まぁでも、ジャッカルが
悪く言われてなくてよかった。




よかった...?




いいわけないじゃん...。

なんなの?私。




みんなにイヤな目で見られて、
さゆにも無視されて、ブン太には最低って言われて。
なんなの?ほんとに。

意味...分かんないっ...よっ!!


私はその場にいることに
耐えられなくなって誰もいない屋上へと走った。





屋上の扉を開けるなり私は泣き出してしまった。




『うわぁああぁあっ。』





何がダメだったの?

何が悪かったの?

何が、何が...、

何がいけなかったの?

何が......!


好きな人に近づきたいと思うことは
そんなにいけないことなの?

ブン太に恋することは
そんなに...大きな罪......?





『うぅ...ふぇっ...ん、っうぅ。』





もう教室に戻る気力はなかった。
ただ、ただ、泣いて、泣いて...。


その日、私が放課後まで
屋上から出ることはなかった。







次の日はもう学校にさえ行かなかった。




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