愛情表現





最近、岳人が冷たい…というか、変。

あたしが偶然(故意的)、
岳人のクラスの前を通った時、
岳人は女の子と話してた。
あたしはそれを発見してしまって
思わずガン見してたら、
岳人はあたしの視線に気付いた。
こっちに来てくれるかと思ったら、
一瞬考えた顔をして
あたしから目を背けた。

そんなことが続いたある日の昼休み、
あたしはまあまあ仲の良い
宍戸の元まで相談に行った。


宍戸は鳳くんとお昼を食べてて、
あたしは相談を諦めようとすると、
鳳くんはあたしの存在に気付いて
宍戸に軽く頭を下げて席を立った。

あたしは鳳くんとすれ違い際に、
『ごめんね』と言うと
鳳くんは優しく微笑んで教室を出てった。

あたしはすかさず空いた席目掛けて走って、
さっきまで鳳くんが座ってた席に着いた。


「どうしたんだよ、name…向日なら……『ちょっと相談!』…相談?」

宍戸は眉をしかめてそう言った。


「俺はんな事聞くほど暇じゃ…『ちょっと相談だってば!』…んだよ」

呆れながらあたしを見た宍戸に
あたしはざっと岳人との状況を話した。


「…ケンカでもしたのかよ?」

『してないしてない!』

「じゃあ何が原因なんだよ…って、向日、」

『…っ、』

宍戸の言葉にビクッとしながら
振り返ると、ドアのとこには
険しい顔をした岳人がいた。
あたしは岳人の顔を見れず、
すかさず顔を逸らした。

変にドキドキする…
悪い事したみたいな気持ち。

あたしは胸に手を当てて
ぎゅっと目を閉じると、
宍戸に名前を呼ばれた。


『な、何…』

「もう行ったぜ」

その言葉を聞いてほっとした。
言葉通り、後ろを振り返ると
やっぱりそこに岳人はいなかった。


『…がっくん、』

「…あ?」

『岳人…あたしのこと見てた?』

あたしは不意に思ったことを口に出したら
宍戸はため息をついて口を開いた。


「向日、お前の背中ガン見。んで、俺の顔もガン見。機嫌悪そーだったぜ」

『…、』

宍戸はそう言うとあたしの肩を
ぽんぽんと叩いてから
立ち上がってどこかに行った。

どういう意味だったのかわからない。
けど、完全スルーじゃない…
あたしが悪いのかわかんないけど
あたしは無性に岳人に謝りたくなった。

どこに行ったかわからない岳人を追いかけに、
あたしは廊下を走ってた。
人のことを言えないけど、
小さい人を見つけるのは大変。
岳人は背の高い女の子より低いから
なかなか見つからない。
時計をチラチラ確認しながら
廊下を走り回った。


『はぁっ…がっくんっ…』

しばらく廊下を走った。
けど、もう予鈴も鳴って
みんな教室に入ってった。
諦めかけたその時、大きな柱にもたれ掛かってる
背の低い人がいた。


『っ…が、っくん…』

別にケンカした訳じゃない。
何にもなかったはずなのに、
岳人を見ると目に涙が溜まってきた。
そのままの顔で岳人のとこまで
走ろうとしたら、
岳人があたしに気付いて
跳ぶようにこちらに向かって来た。


「nameっ!」

『は、はいっ!』

「っ、……」

『…?』

岳人の勢いの良さに目をつぶったけど、
何にも起こらなかった。
恐る恐る目を開けると、
岳人は頭を掻いてしゃがみ込んでた。


『…が、くと?』

「クソクソっ!nameのせいだぜ!」

『な、何が?!』

「嫉妬だよ!」

『…っ、』

岳人はそう言うと顔を上げた。
その岳人の顔は真っ赤だった。
何だかその顔にドキドキしてしまった。


『嫉妬って…あたしの方が…「仕返したんだよ!」…え、』

岳人の言葉に唖然としてると、
むしゃくしゃしたままの岳人が口を開いた。


「…最近、name…クラスの男子とばっかしゃべってんだろ」

『…ううん?』

「しゃべってんだろ!」

『え…別にしゃべってるつも…「俺が見た時はいっつもしゃべってんだよ!クソクソっ!」ご、ごめんごめん…』

何だかここまでの話を聞いたら
だいたい検討がついてきた。

そうゆうことだったんだね…


あたしは今にも噛み付きそうなほど怒ってる
岳人の頭をぽんぽんと撫でた。
すると、一瞬ビクッとしてから
照れ隠しをするように下を向いた。


『…あたしも岳人が女の子と話してるの見て嫌だった…ごめんね』

「別に…わかってくれたら俺は…」

『うん、すっごくわかった』

「わかったら何か言えよ」

(機嫌悪いなぁ…)
『じゃあ顔上げて!』

あたしがそう言うと
岳人は渋々顔を上げた。
そして、あたしは岳人の手を握って
しっかり目を見て微笑んだ。


『がっくん、大好きだよ!』

「し…知ってんだよ、バカ」

岳人はあたしの言葉に顔を真っ赤にして
頭を軽く叩いた。

あたしはそれが嬉しくて
にっこり笑って見せた。


これが、あたしたちの愛情表現。




end◇◇







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