籠の小鳥





籠の小鳥よ。



籠を開き、外へと放したならば、

もう君はここへは戻らないだろう。


だけど、僕はいつまでも眺めているのです。

その窓から君の飛びたった空を。












































君は病院という名の
小さな箱の中でずっと過ごしてきたね。
外には目を向けようともしなかった。
ずっと閉じこもっていた。
誰にも心を開かなかった。


井の中の蛙とはこのことか。


僕は最初は君が心配だった。
だから、毎日のように君のいる箱の中に通ったんだ。
君は僕にだけは心を開いてくれるようになった。



いつしか君といる時間が何よりも好きになっていたんだ。
そう、テニスをしている時よりも。
僕と君が惹かれあうのに時間はかからなかったね。




そんな僕と君の小さな小さな恋の物語。































これは先日の出来事───...



病院の306号室。

ドアを開けたらいつもと変わらない君の笑顔が僕を迎えてくれた。



『周助っ♪!!』
「やぁ、元気かい?」
『うん!もうすぐ、退院できるの!これでやっと周助と同じ学校へ行けるね!!』
「ふふ、そうだね。」



nameはもう10年以上、
この病院どころか部屋からもあまり出ていない。


それどころか、人と関わるのを嫌がり、
医者にですら滅多に目を合わそうとしない。


何がそこまで彼女を
他人に近づかないようにしているのか
全く検討がつかないが、
このままではいけないということはすぐに分かった。



でもそれももう心配なさそうだ。
なぜなら、彼女は退院するから。
外に出れば、人と接さざるを得なくなろだろうしね。










...でも、僕のその考えは甘かったようだ。



『退院したら、まず運動しなきゃね!私ずーっと動いてないんだもの。』
「そうだね。」
『学校が終わったら周助も私の運動につきあってね?』
「そうしてあげたいのは山々なんだけどね...僕は放課後は部活があるから。」
『あぁ!そっか。なら、私、終わるまで待ってる。』
「えぇ?結構遅くまでやってるよ?」
『いいの。教室で待っているから。』
「...そっか。教室には友達もいるだろうしね。分かったよ。でも遅くなる時は...『友達?』
「え?うん...友達...。え?」




何故そこに反応したんだ?
しかもキョトンとしているし...。




『私、友達なんか作らないよ?周助がいてくれるだけでいいもん。』
「え、でも...そういうわけにはいかないだろう?」
『どうして?』
「だって休み時間とか昼休みとか...」
『周助のとこにいくから大丈夫。あ、心配しないで!周助が忙しい時は 私 一人でいるから♪』
「...じゃあ修学旅行...とか、は?」
『そんなの行かないでもいいもん。』





驚いた。
そこまで人と関わりたくないのか。
しかもこれはちょっとやそっとじゃ揺るぎないようだ。




「どうして友達を作らないんだい...?」
『...?だって必要性を感じないもの。』
「必要性...?」
『えぇ。昔、誰かが言ってたの。《自分のパートナーを見つけなさい。 その人と一生支え合っていける、信頼できるパートナーを。》って。』



間違ってはいないと思う...けど。

それがどうかしたのかな?




『私、それが周助だと思ってる。』
「...ありがとう。」



たしかに、僕は君となら一生一緒でも構わないよ。




『だからもう他の人は必要ないでしょ?』



......え?




『パートナーみつけたんだから、もう他の人と関わる必要ないでしょ?広く浅くとか八方美人って嫌いなの。私は自分を分かってくれる人が一人いるならもうそれで十分だよ。』




その時、僕は..そう、としか言えなかった。

まさか、そんな考えでいたなんて。








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