April 1st



「んー。だからさ、今日はごめんな。
 ま、でもその辺遊ぶとこ結構あるだろぃ?
 ケーキバイキングも行けばいいんじゃね?」


『は…?』



さっから、私"は?"しか
言ってないような気がする。

だってブン太があまりにも
すっ飛んだことばっかり言うから。


でも、さすがにそれはないんじゃないの…?


こっちはさ、久しぶりのデートだから、
ちゃんとそれなりにオシャレもして、
ちょっと早めに待ち合わせ場所に来て、
お金もいつもより多めに持ってきて、
目的地の近くのお店とか前もって調べて、
少しでも楽しくなればいいなって、
一生懸命私なりに頑張ってたのに。

30分間…心配して待ってたのに…。


それなのに、それはないんじゃないの…?


「今日さ、ジャッカルと
 遊ぶ約束してたの忘れててさー、悪ぃな!」
『ブン太。』
「ん?」
『………。』
「…?」


…なんなの、もう…。


『…もういい。』




そう呟いて、電話を切ろうとした時、


「おぅ!名前じゃねーか!」


私の前に現れたのは、
ジャッカルだった。


『ジャッカル…?』
「え、ジャッカル?!
 あ、ちょっ名前っ…」


今、ブン太、ジャッカルと
約束してたの忘れたって言ってなかったっけ?
おかしいなぁ…。


「ちがっ、名前!違うんだ!」


明らかに動揺しているブン太の声。
何が、違うのかな?


「おい、名前?名前っ…


プッ…ツーツーツーツー



「名前電話中だったのか、ごめんな
 ……って、えぇ?!名前泣っ?!」



ジャッカルを
困らせたいわけじゃないんだけど、
涙が全然止まってくれない。

泣くなという私の意思に反して
涙はどんどん流れる。


『うぅ…〜…っ。』
「おい。どうしたんだよ、大丈夫か?」
『ブン、太…なんっ…て、嫌い…ーっ』


ジャッカルからしたら
全く意味が分からないだろう。
でもそんなこと考えてる余裕は
今の私にはなかった。


オロオロしながらも、
ジャッカルはずっと背中をさすってくれる。


その時、



「名前っ!!!!」





聞き間違えるはずもない。

この声は…


『ブン、太…?』




電話を切ってからまだ1分も経っていない。
それにブン太の家は
ここから最低でも30分はかかるはず。

…なんで、いるの?




「名前っ!違うっ!これは…違うんだ!」


見るからにブン太は焦っていて、
言いたいことがよく分からない。


「ブン太、お前、落ち着けよ…。」
「うるせー!なんでここにジャッカルがいるんだよぃ!お前のせいだからなっ!」
「俺かよ!」


息切れがひどい。
いつものお約束の流れが終わると、
肩で息をしながらこっちを向いた。


「…違うんだよ、名前。」
『それはもう何回も聞いたよ…。』
「違うんだ、ほら今日は…」


さっきから違うばっかりで、
話が全然前に進まない。

急な展開に驚いたのと
ブン太の異常な焦り具合で、
いつの間にか涙は止まっていた。


「今日の日付は…?」
『…今日?4月1日だけど…。』
「それだよぃ。」
『…?』


ブン太がはぁっとため息をついた。
ため息をつきたいのはこっちの方だ。
意味がわからない。

ジャッカルを見ると、
彼はもう言いたいことが分かっているようで、
呆れたようななんとも言えない顔をしている。


「だからっ。今日はエイプリルフール!」
『…!』


エイプリルフール…。
もしかして、


『うそだったの…?!』
「そうだよ!なんで気づかないんだよぃ!」


なんでと言われても…。
仕方が無いじゃないの。



「なんかもう俺、お邪魔みたいだし、もう行くな。喧嘩すんなよー?」
「うるさいっ。」



ジャッカルはゲームセンターの中に消えていった。
中から聞こえてきた声は、おそらく赤也の声。

またお金使わされてるのかなぁ、なんて、
他人事のように考えられるまでは落ち着いた。






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