気付いてほしかった



 



廊下の先に今探していた人物、柳生を見つける。
柳生もこっちに気がついたようで、


「…あ、仁王くんですか?ちょっと!何故私の格好をしてるんですか!」
「柳生!ちょっ来んしゃい!」



柳生の腕を掴んで、本日4回目の部室へ走った。

柳生が走ってる間、
後ろでずっと何か言っていたが
そんなこと聞いている余裕なんてもちろんなかったし、

柳生の格好のまま柳生を引っ張ってる
この有り得ない状況を誰かに見られたら…なんて
考えてる余裕もなかった。



「仁王くんなんなんですか!授業始まってますよ?!部室で何をするつもりなんですか!」
「柳生、ええから今すぐ幸村に変装してくれ。」
「幸村くんですか?何故そんなこと…」
「ええからっ!」



柳生は腑に落ちない顔をしていたが、
…分かりました、といって幸村に変装した。

その時に自分も元の姿に戻した。


変装したあと、向かうのはもちろん名前のもと。

まだ図書室にいるかは分からなかったが、
幸村の格好をした柳生を連れて
もう一度図書室に向かった。


幸いにも名前はまだ図書室にいた。



「名前!」
『あ、仁王!さっきの何だったの?いきなり走ってったからびっくりしたよ。』
「名前、これ誰かわかるか?!」



そう言って、名前の話など
聞き流して柳生を突き出した。







































『え、柳生くん…だよね?』
「柳生…じゃと?」





何を見て言うとるんじゃ。

どうみても幸村じゃろが。

髪も瞳の色も服の着方も、全部全部。










ハッ…







「あははははははははははっ…!」
『え…?仁王…?』
「仁王くん…」




ハッ…。


こりゃ傑作ぜよ。
なんじゃ、そうか。なるほどな。




お前は最初から柳生しか見とらんかったんじゃな。  



お前は俺の変装を見破っとったわけでもないし、
俺のペテンを見破っとったわけでもなかったんじゃ。



俺が本物の柳生じゃないのを

…見破っとっただけ。




ほんに、とんだピエロぜよ。






「仁王くん…あの、」
『仁王…なんで泣…』
「触んなっ…  」



俺の方にのばされた手を振り払う。 



視界の端に名前の顔が見えた。


なんで、お前が傷ついた顔しとんじゃ。 
なんで、お前が泣きそうな顔しとんじゃ。



泣きたいのはこっちぜよ…っ。



なんで、柳生なんじゃ。




なんで、なんで、なんで、なんで…

  






おまんは…気付いてくれてると思ってた…









∵あとがき
 書いてて自分で悲しくなりました。

 執筆 2013.07.31




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