気付いてほしかった






その日、珍しく、入れ替わらずに学校に行った。


一番最初に話しかけてきたのは柳生だった。


「おはようございます。仁王くん、今日あなた、逃げた方がいいかもしれません。」
「は?」
「実はですね…」



柳生が言うには、入れ替わった時に、
俺っぽくしていてよくサボっていたから、
今日あたりに担任から説教がくるかもしれないとのことだった。


どんだけサボったんじゃ。
担任から説教がくるほど、俺はサボらんじゃろが。

まあいい。

幸村あたりに変装しとくか。



そうと決まれば担任に見つかる前に
さっさと着替えんといかんな。

幸村に変装し終わったから、
屋上の花壇のところへ行こうと部室から出た時に
ちょうど、名前が向こうから歩いてきた。


「よう、名前今日は…『あ、幸村くん、おはよう』…え?」
『朝練? お疲れ様。病み上がりなのに部長は大変だね。』
「あ…あぁ、そうだね。」



どういうことだ…?変装がバレてない?

俺のこと幸村じゃと思っとんか?


そりゃたしかに幸村に変装したから
見た目は完璧に幸村のはずだが…。


『熱中症とかには気をつけなよ?じゃ、先に行くね。』  
「うん、ありがとう…。」



…俺のこと気付いてなかったよな? 


幸村だからか?
いや、そんなの関係ないはず。



よく分からんが、次は他のやつ
…柳にでも変装してみるか。 


今出たところだったが、また部室に戻り、
今度は柳に変装して次は図書室に向かった。



授業だから図書室にはもちろん人はいない。

サボりすぎて怒られるかもしれないって時に
授業をサボって逃げるなんて
結局状況を悪化させるだけな気がするが…。



図書室に先生さえいないってどうなんじゃよ。
生徒にサボってくださいと言ってるようなもんだ。








そのへんの本を適当にとって
読んだフリをしていると後ろからカタ、と音がきこえた。


「誰かいるのか?」


振り向くと…


『え?あ、柳くん?』



名前だった。今日はよく会うな。
…また気付かないんか?



『あ。』


ハッとした表情をした。

変装がバレたんだと思った。
やっぱり、さっきのはたまたま…


『その本、私も呼んだことあるよ!』



え?



「…そ、そうなのか。奇遇だな。」

 



また見破られなかった?

まさか。
嫌な予感がする。


「悪い用事を思い出した。失礼する。」




ダッシュで図書室を出て、もう一度部室に向かい、
今度は柳生に変装して、名前のいる図書室に全力疾走で戻った。



「苗字さん!」
『あ、柳生くん……ってもう!仁王じゃないの!』



嫌な予感がする、嫌な予感がする。


『さっきまで、柳くんもいたのよ?なんかすんごい急いで出ていっちゃったけ…って仁王?!どこ行くのよ?!…あれ、行っちゃった。』



また急いで図書室を出た。


廊下を走っている途中で
休み時間が終わるチャイムが鳴った。


まさか。

変装がバレてたのって…





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