05







『私…アリスじゃないっ!』
「…?あなたはアリスよ?私達の大好きなアリスっ。」




この子おかしいんじゃないの?
全然意味が分からない。


アリスって誰?私達って誰?大好きなってどういうこと?!



『あなた…誰っ…?!』
「あ、ごめんなさい。あまりにも嬉しくて名乗るのを忘れてた…。」
『…?嬉しい?』
「うん。やっとアリスに会えたんだものっ!」



目をキラキラさせて、私を見てくる。
嘘…ではなさそうだけど…。


「私は公爵夫人。」



公爵夫人……?

夫人ってことは…結婚してるの?
…いやいやいや。おかしい。

ここ日本だよ?
日本では女性は16歳以上じゃないと、結婚できないはず!!

私だってまだ今年で15歳。私でさえまだダメなのに、
こんな小さな子が、夫人なわけないじゃない。

それに公爵……って。
どこの人よ?いつの時代の話よ?




…はぁ何考えてるんだろう、私。
今はそんなことどうでもいいよね。




『さっき私に"会いたいの?"ってきいたよね?』
「うん。」
『あなたは知ってるの?』
「知ってるわ、もちろん。」



やっぱりこの子関係があるんだ。



『どこにいるの?』
「不思議の国。私達の世界だよ。」



不思議の国…。
なんか聞いたことあるような…。

にしても、メルヘンな解答してきたな。
こんな状況でジョークいえるなんてなかなかね。



『どこにいるの?』
「だから、不思議の国だってば。」
『…………。』
「…………。」
『ねぇ、みんなはどこn…「どうして信じてくれないの。」…ごめん。』



半泣きでそう言われたら信じるしかないじゃん…。




『なんでそこにみんなは行っちゃったの?』
「えっ…と…それは。その……。」



もごもごし始めたからなんだか可哀想になってきた。



『じゃあどうしたらみんなに会えるのかな?』
「アリスは自分のこと覚えてないんだよね、うーんと。だったらまず、思い出してもらわないとダメだから……物語を辿れば思い出してくれるかな?んー…でもどうしよう。でもやっぱり私が……」




ブツブツと一人でしゃべりだした。

私の質問は無視か…。



また、アリスって言ってたな。






…ん?…もしかしてこの子、
アリスってルイス・キャロルの"不思議の国のアリス"のこと言ってる?

たしかにそれなら色々とつじつまがあってくる。


公爵夫人というのも、
アリスというのも、不思議の国というのも。





「アリス、決めたわ!」
『え……?』
「私は先に行ってるから,またあとで、ね!」
『えぇ?!』
「-不思議に思った少女はそのうさぎを追いかけて穴に落ちていきました-」
『…??』
「少女はアリス、うさぎは白うさぎだよ。じゃあね。」
『え、あ…ちょっと?!』


その女の子、公爵夫人は走ってどこかに行ってしまった。



『…えー………。』









-不思議に思った少女はそのうさぎを
追いかけて穴に落ちていきました-


-少女はアリス、うさぎは白うさぎ-



……つまり、私に白うさぎを
追いかけろって言ってるんだよね。
メルヘンすぎる。


でも、現にみんないなくなってるわけだし…。



とりあえず、みんなを連れ戻さないといけないよね、
と、なると、その不思議の国に行かないといけなくて、
それでそこに行くには白うさぎを追いかけないとダメで…。

うー…ん。





そんなことを考えていると、
自分が立っているところの先にある角に人が立っているのが見えた。

…あれ、チョタじゃない?


でもなんか変…。色々と。


服もいつものチョタの服
じゃないし、腰には大きな懐中時計を携えている。

いやもう、百歩譲って、
その2つはもういいとするよ、百歩譲って!!
でももう1つどう考えても納得いかないところがあるんです。



はえてんだよ、耳が。
耳がはえてんの!!頭に!
白いふかふかの長い耳が!




『チョタっ!何してんの?!』
「時間がない、時間がない。」



そう呟きながら、チョタは走って行ってしまった。




『ちょっと!待ってってば!』




私もチョタを追って走り出した。
足のはやさはクラスの女子1番なんだから!自信あるよッ!


…とはいったものの、
あっちはテニス部の正レギュラー。

なかなか追いつかない。差は開かず、縮まず。


『チョッ…タっ…待っ…てって……ば〜〜〜〜っ!』



もー!全然聞いてくれねーっ!
泣きそうだよ、っもう。待てよー。




ていうか、ここどこだよ?


必死で追いかけてたから、
どこをどう走ってきたか全く覚えてない。
もはや、後戻りはできない状態。




周りを見渡してみると、たくさんの花が咲いていた。

白い小さなアーチがあったり、テーブルとイスがあったり。
下はコンクリートではなくて草。

なんていうか…庭って感じ。


しかも、日本風ではなく、欧米風の。


テーブルには紅茶やお菓子があり、
周りからは薔薇の香りが漂っている。



こんな素敵なところ、この地域にあったっけ?
…いや、ないはず。
おかしいな。どの道を使ったんだろう?





『あれ……チョタ?』




チョタがいない?!うそっなんで。


この景色に見とれている間に
チョタを見失ってしまったみたいだ。









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