01



「ありすー!!今日、部活が休みって知ってたか?!」


廊下の向こうからそう叫びながら
走ってやってきたのは氷帝学園、テニス部の向日岳人。



『知ってるよ?私がみんなに伝えたんだから。』
「えっ…そうなのか…。」



岳人にとっては、とっておきの情報だったらしく、
私がすでに知っていると知ると、
少し残念そうな顔をした。

でもまたすぐにパッと明るい表情に戻った。



「じゃっじゃあよ、こっちは知ってるか?!」
『ん、なに?』
「今日、跡部がパーティするって!!」



え…何それ。今日?!
初耳だよ、そんなの。いきなりすぎです。

今日誰かの誕生日だったっけ?
いや、そんなことはないはず。

…じゃあ何でパーティなんかするんだ?



「ほら、お前がこの前、ケーキバイキングしたい〜って言ってただろ?」
『言ったねー…。そういえば。』
「それだよ!」



は…?いや、どれだよ。




「だからー、跡部がケーキパーティしてくれんだよ!」
『え…えぇ?!』




まさかの私の希望?!

私の中ではみんなでスイパラ行きたいなー…
くらいの考えだったんだけど。




『あのー…どこでやるの…それ。』
「さあ?なんとかホテルとか言ってたぜ。」



マジかよ。信じられん。
跡部のすることはもう本当に分からん…。



『でもさ…どこか分からないんだったら、行けないじゃない?』
「そんなの大丈夫だろ。門のところに迎えの車が来てるらしいし。」


……そうきたか。

窓から南門を見たら……ありましたよ、ありました車が。
そりゃもうデカいなんてもんじゃないよ。
20人は軽く乗れるんじゃないかってくらいデカい。

……とんでもない。




「ありす姫。お迎えにきたでv」




女子の甲高い声と共に教室に現れたのは…




『あ、侑士……。』



「お前は来なくていーんだよっ。俺が迎えに来たんだからっ!!」


え……あ、岳人そうだったんだ。
報告しに来ただけかと思ってた。



「岳人らがなかなか来ーへんから俺が来たんやんか……。」



2人はあーだこーだと言い合いを始めだした。




『あのー…。せっかくですが、私、歩いて行きたいんで。』
「「え?」」



いや、当たり前でしょ。

まず、あんな高級車に乗るのは気がひける…
というのもあるけど!!

最大の理由は、もちろん女子たちの目!!

マネージャーってだけで、多少敵視されてるのに、
その上一緒に車になんて乗ったらどうなる?

私、殺されるよ。間違いなく。



「なんでだよ?!乗ろーぜ、車。」
「そうやで……なんで歩くんや?」
『いいじゃない、別に。』
「ダメだっ!!歩くのはダメだ!!」




はぁ?何でよ。好きにさせてよね…。



「俺らがラクして、姫さんに歩かすわけにはいかんやろ?」
『……じゃあもうタクシーでもなんでも乗るから…』
「何だよ、それ!こっちに乗るのと同じじゃねぇかっ。」



あぁ…もう分かってないなぁ、君らは…。
自分がモテてるってことを
ちゃんと自覚してほしいもんだよ。




「何だ、お前。俺様の用意した車には乗れねぇっていうのか、あーん?」



お前まで来たか…。

またキャーキャーと黄色い声があがる。

でもコイツ、跡部はなかなか物わかりのいい方だ。
跡部なら分かってくれるはず。

私は跡部と目を合わせてから、
チラッと女子たちの方に目をやった。



「……あぁ…なるほどな。」


あぁ、良かった。
分かってくれたみたいだ。


「おい!!忍足、向日、行くぞ!」
「えー?!」
「ありす置いて行ってええんかいな?」
「あとで説明してやるから、さっさとついてこい!!」



3人はやっと出て行ってくれるようだ。


口パクで"ありがとう"と跡部に伝えたら、



「お前の家に車送っとくから、それで来い!」



と言われた。……まじかよ。


まあでもここから乗るよりかは
だいぶマシ……かな?
































◇◆






家に帰ると大きな車が止まっていた。

さっき門の所で見た車と比べたら、
小さいけど、それでもやっぱりデカい。


「ありす様、お待ちしておりました。」


中から出てきた男の人は
そう言うと車のドアを開けてくれた。



『あ、ありがとうございます…。』



どこのお嬢様だよ、これ。
…でも悪い気はしないな、うん。



20分くらい経ったかな…。目的のホテルに着いた。



「どうぞ、ごゆっくり。」



男の人は私が降りたのを確認すると、
車で元来た道を戻って行ってしまった。


……できれば中まで
一緒について来てほしかったー…。


だって何、ここ!!
デカすぎだよ、このホテル!!
何でこう、何でもかんでもデカいの?!
入りづらいわっ。































「アリス、みぃつけた。」

















『え?』



後ろから、かわいらしい声がした。


その声の主はうしろから抱きついてきた。



『え、え…え?!』



その子は私の腰くらいの背で
(小学2年生くらい…)ゆるふわショートカット。

ほっぺも手もぷっくりしていて、とても愛らしい。

服はそでやすそがふんわりとした
ワンピース…いや、ミニドレス?みたいな感じ。
とにかくかわいい!!



「アリスーっ♪」
『…アリス?』



そういえば、さっきもアリスって…。
誰かと間違ってるのかな?


それにしてもどうしてこんな小さな子が
1人がここにいるんだろう。


とりあえず私はその子を自分の腰から離した。




『あのね、私、アリスじゃないよ?』



その子は私を見上げたまま、きょとっとしている。



『ねぇあなた名前はなん…「ありす先輩!!」…え?』



振り向くとホテルの
入り口に日吉が立っていた。



「何、しゃがんでるんですか。早くしてください、みんな待ってますよ。」
『ごめん、ごめん、今行く!でも先にこの子を……ってあれ?』



さっきの子がいなくなってる。



「何ですか?」
『あ、いや…。何でも、な…くないけど、あれ?』


おかしいな。今までここにいたのに。
走ってどこか行っちゃったのかな?




「先輩……とうとうおかしくなっちゃったんですね。」
『とうとうって何?!おかしくないよ!!』



はいはい…と言いながらダルそうに
ホテルの中に入っていく日吉のあとを
追いかけて、私もホテルに入っていった。









さっきの子ちゃんと、探している人、

アリス…だったっけ?

見つかればいいんだけど…。




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