09




清々しい空気に浸っていると
灰色の煙がユラユラと目の前を通った。


…ゲー。気分台なし、タバコくさ。
誰よ、もう。

ちょっと文句を言ってやろう。



そう思って煙を辿っていくと、
大きな大きなキノコの元へと辿り着いた。 


そのキノコだけ圧倒的に大きい。
10mくらい。いや、もっとかな? 

ズバぬけて目立つそのキノコの上が
煙の発生している所らしかった。





「あらあら。かわいいお客さんね?いらっしゃい。」



キノコの上から現れたのはパイプ
…のようなものをふかしている女性だった。

綺麗な金髪のストレート。
口紅は真紅で、まつ毛は長く、スラッとしていて、
一言で表すのなら美人。

 

「どうかしたの?こんなところへ来るなんて。」  
『え?あ…いや…』



思いっきり文句を言ってやろうと思っていたけれど、
何かもう、何も言えなくなった。


だって美しいんですもの!!
もういいよ、ばんばん吸っちゃって。



「…あら?あなた、アリスじゃないかしら?」
『へ…?まぁ、そうらしいんですけど…』



なんで、皆私をアリスって呼ぶの?


顔だってバリバリ日本人だし、服だって制服。
どうみてもアリスの要素なんてな……、ん?


『?!』


自分の服を見てギョッとした。
何コレ、何コレ、何コレー!!!


『何?!この服ー!!!』
「?」


私は制服の要素なんてこれっぽっちもない
水色のエプロンドレスを身にまとっていた。


「どうしたの、何もおかしくないわよ?」
『おかしいですよ!こんなヒラヒラした服!』
「あら、前はとってもお気に入りの服だって言ってたのに。」
『前?』
「ええ、すそがふわっとふくらんでいて、かわいいでしょ、って。」
『かわいい、お気に入り…』


なんだか聞いたことがあるような。






―『みてみて!かわいいでしょ!ふわふわなの!』
 「あら、ほんと素敵ね、色もきれいだわ。」
 『へっへーん!でもあげないよー!私のお気に入りだから!』
 「まあ、ふふ、残念ね。」―






「どうかしたの?」
『いや、あの…。もしかして、私と前にあったことありますか?』



…そんなハズはないけど。
こんな美人さん私が忘れるわけがない。
他人の空似かな。


「ええ、あるわ。あなたが小さな頃から知ってる。」
『小さな頃…?』
「ううん、なんでもないの。それよりどうしてこんなところにいるの?」


ハッキリと思い出せなくてモヤモヤする。
なんか変な気分。でも。今はそんなことで悩んでる暇はない。


『私、お城に行きたいの。行き方知ってる?』
「お城…?ああ、そういえば今日は舞踏会だったわね。」


そういってその人はふぅと口から煙を出した。
その煙はぐにゃぐにゃと空で形を変え、
最終的には大きな大きな矢印の形になった。


「お城はあっちよ。」
『すごーい、ありがとう!』
「あ、そうそう。行く途中にお茶会があると思うんだけど、そこの帽子屋さんによろしくね。そのついでに、これを渡しておいてくれないかしら?」


そういって上から何かが降ってきた。



『なに、これ?』
「分からないわ。私にはさっぱり。でも帽子屋さんといつも一緒にいるうさちゃんが落としていったのは間違いないの。届けてもらえる?」



見ると、それは長い棒が2本入った袋だった。
もしかして、これお箸かな。

この世界でお箸って…。うさぎがお箸って…。


『ま、いっか。分かった、届ける。』
「助かるわ。じゃあいってらっしゃい、気を付けてね。」
『うん、ありがとう!』




ここは話の通じない人ばっかりかと思ってたけど
案外そうでもなかったみたい。


さっき煙が示していた方向へ歩き出した。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -