天邪鬼と悪魔の話
俺はキレると我を忘れて暴走してしまう。
そのせいか俺の周りには人が寄って来ない。
唯一話すとすればクラブの先輩くらいだ。
別にそれでもよかった。人間関係なんて面倒くさい。
そうやって毎日毎日芝生でねっころがっていた。
でも本当は誰かを待っていたのかもしれない。
話しかけてくれるのを。
そんなある日ある女が話しかけてきた。
見たことがある。多分、マネージャー。
『切原赤也。クラブをサボるな。』
「あぁ?」
『クラブをサボるなって言ってんだ。』
なんだ、コイツ。
どうせ呼んでこいって言われて
ジャンケンかなんかで負けて嫌々来たんだろよ。
「お前に関係ねぇ。」
『関係ある。』
「ねぇよ!」
だいたいキツく言ったら、
みんな離れていく。お前もそうだ。
『マネージャーだからある!』
「ふざけんなっ」
『そ、そんなに嫌ならクラブ辞めたら?そしたら僕とも関係なくなる。』
なんだ、コイツ。すげぇ言い返してくるじゃん…
「……お前、」
『……何?』
「俺が怖くねぇの?」
普通もう逃げてるだろ…。
そしたらnameはちょっと震えながら、
『怖くない、全く。』
だってよ。
なんか変な奴だな
「お前なんか面白ぇな。しょうがないからクラブ行ってやるよ。」
久しぶりに笑った。
『……はあ』
クラブに行くと、予想通りのマネージャー達の反応。
「どうやって連れてきた?!」
『は?普通に…』
「すごいな!私なんて関わりたくもないのに」
関わりたくない…か。
だろうな…。
『そうかな?別にそうは思わないけど…。』
………?!
予想外の答え。
正直、嬉しかった。
それから毎日、nameが芝生まで迎えに来てくれるから
俺もずっとそこで待っていた。
そしたら昨日怒られた。
もっと人と接しろだって。
そんなの無理だ。今までもこれからも。
でもお前が
『僕は赤也が笑ってるのわりと好きだよ。だからみんなにも分かってほしいし仲良くなってほしい。』
なんて言うから…。
なら頑張ってみようか、と思えた。
そしたら今日いきなり芝生に誰かを連れてきた。
『僕の親友のなな。』
「どうも。」
ペコッと挨拶された。
「……?」
『すぐにみんなと仲良く…なんて無理でしょ?だから今日は一人め。マネージャー友達第一号』
「……あぁ」
『僕の大切な親友だ。何かしたら許さん。』
「何もしねぇよ…」
『ならいい。じゃあね。』
は…?放置かよ?!
おいおいおい…。
どうすんだよ、この状況。
「切原はなんでいつもクラブに来ないの?」
「あ?」
いきなりそんな質問かよ。
「行ってどうする…。」
「どうするって練習に決まってるじゃん」
「行っても、お前らは俺を怖がるだろが。」
「そら、怖いもの。」
「…即答かよ。」
「怖いから怖いって言うんだよ。」
「……」
「だから切原も寂しいなら寂しいって言えばいい。」
「……?!」
「うちらだってそんな分からず屋じゃないよ。うちだってnameに切原は怖くないって
教えてもらったから今話せてるんだよ。」
「……。」
「明日からは普通に来なよ。さっきnameも言ってたみたいにいきなりは無理だけどさ」
「nameの言う通りだ。」
「…え?」
「誤解してたのも避けてたのも俺の方だったみたいだ。」
「そだね。てか切原ってname、好きだよね?」
「はああああ??!」
何言ってんだっコイツは?!
「図星、か。」
「はあっ?!」
「照れるな、照れるな。誰もが通る道だ。」
「意味分かんねぇし///」
「マネージャー達に言ったら絶対協力してくれるよ♪」
「いや、ちょ…」
「さっそく発表してくる!」
「あ、おい…!!」
nameの親友走り速ッ!!
おいおいおい…
どうすんだよ、これ。
てかなんでバレた?!!!!
◇◆
急いで追いかけて部室に入ったが、
時すでに遅し。
マネージャー達がニヤニヤしながらこっちを見てた。
「な、なんだよ!?」
「大丈夫、何も言うな」
「そっかそっか。」
「切原くんも人並みの感情持ってたんだなー」
「協力するから!」
「安心しな!」
なんなんだ…、本当に。
いきなりフレンドリーすぎ。
nameの親友が俺にコソッと
「女は恋愛話ですぐ仲良くなるもんよ」
と言った。
…………
それから俺は毎日
マネージャー達にからかわれる日々…。
いきなり仲良くなりすぎだ…
でも最近学校が
楽しくなってきたのも事実。
クラスでも友達は増えていって、
俺がキレるようなことはだんだん減っていった.
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