運命の迷子
◇◆
数時間後…………。
迷子になりました☆
コイツを信じた俺がバカやった……。
『迷子の迷子の〜♪子猫ちゃん〜♪』
アホや、コイツ。
何 のんきに歌っとんねん…
「なぁname、帰れるんかいな…?」
『多分ね♪』
多分て……大丈夫なんか、ほんま。
『なんか疲れちゃったねー』
「ずっと歩いてるからなぁ」
『ちょっと休憩しよ!』
そういってnameは近くにあったベンチに座った。
そして空いてる席をポンポン叩いて俺に座れって言うた。
「ほんま帰られへんかったらどーすんの?」
『大丈夫だって☆』
その自信はいったいどこからくるんやろか…
『疲れたから探検はちょっと休憩。おしゃべりしようか!』
「おしゃべり?」
『うん、…ゆうしはね、大きくなったらなりたいものとかある?』
「そら、あるよ。」
さっきまでえらい明るかったのに
いきなり真剣な顔しだしたからちょっと驚いた。
『私はね、マネージャーさんって言うのになりたいの。テレビに出てたマネージャーさんがすごくかっこよかったんだぁ。』
「マネージャー…」
『それにね!明るくて、優しいくてかわいいの。』
「………」
『……でも、』
…でも?
『今日クラスの男の子に言ったら私には無理だって!』
「は?…なんでや?」
『優しくないしブスだからだって!』
はあ…?ソイツ目がおかしいんとちゃうか?
全然ブスちゃうし…。
『それでね、お父さんにもダメって言われちゃった』
だんだん泣きそうな顔になってきたname。
ええ?俺はどうしたらええねん…
『私は大きくなったらお父さんのお手伝いしなきゃいけないんだって。だからお医者さんになるための勉強しなきゃダメなの。』
「nameのお父ちゃん、医者なんか?」
『うん、そう。それでね、マネージャーなんてしてたら勉強できないだろ!って怒られた…。』
「……。」
なんや、これ。
え?どうしたらええん?
『…っそうだ!ゆうしは何になりたいのっ?』
「え?俺かいな…。テニスプレイヤーになりたいと思っとった…けど…。」
『けど?』
「俺医者にもなりたいんや」
『?!』
「カッコえぇやん?それに病気の人とか助けられるって、すごいと思うんや!俺のお父ちゃんも医者なんやで!」
『……そうなの?』
「……おん。だから俺ら一緒やな!」
『…そっかー、一緒かあ!』
ほんまは医者になりたいなんて思ったことない。
別になりたくないとも思ったことないけど。
バレてへんかな?
nameを励ますために
医者になりたいなんて、嘘をついたこと。
いや、バレてるんやろなあ。
「侑士!!」
「お母ちゃん?!」
向こうの方からお母ちゃんが走ってきた。
『ゆうしのお母さん?』
「そうや!」
『そっか〜…会えてよかったね!』
「うん。」
ほんまよかったわ。
野宿なんて真っ平ごめんやからな。
でも、心の底からは喜ばれへんかった。
お母ちゃんに会えたってことはnameとバイバイや。
それがなんかふに落ちへんかった。
言いたいことも、聞きたいことも、
一緒にしたいことも、まだいっぱいあって名残惜しいってのもあるけど
それだけやない。
nameが悲しい顔のままやったから……
会ってすぐの時みたいに元気になってほしい。
俺多分、nameのこと好きになってもたんや…。
『じゃあね、ゆうし今日は楽しかったよ♪』
「name、待って!俺と約束せぇへん?!」
『約束…?』
「俺は、テニスプレイヤー、nameはマネージャーになるって約束!」
『…でも』
「ほんで、二人ともそれになれたら…」
『?』
「その後は一緒に医者になろうや!」
『!』
アカンかな、こんなんじゃ…
『…うん!!!なる♪約束だよ、ゆうし!』
またnameはニッコリと笑ってくれた。
「…うん///」
『また、東京に来てね…?』
「当たり前や。」
決めた!俺、中学校は東京の中学校に行くわ!
『バイバイ、ゆうし!』
「バイバイ!」
そういってnameと別れて、
大阪行きの飛行機に乗るために空港に行った。
「ゆうし、今日は私達がいない間、デートしてたのね!」
「なっ、ちゃうわっ」
「なんやなんやお前、いっちょ前にデートか〜」
「ちゃう言うてるやろっお父ちゃんとお母ちゃんこそデートしとったんとちゃうんかいなっ!!」
「さぁな〜」
「またあの子に会いに、東京行かなきゃね?」
「……///」
また、俺とnameが会うのは
まだもう少し先のお話。
∵あとがき
運命の出会いって、
やっぱり一度は憧れますよね。
そんな私の願望を詰め込みました。
執筆 2012.01.12
修正 2014.03.10
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