運命の迷子




今、俺は旅行に来とる。日本の首都東京に。

両親の後ろを必死に追いかけとってんけど、
途中から違う人を追いかけてしまってて
大都市の中、一人で迷子になってもーた。


俺、まだ9歳やで?
しっかり子供(俺)のこと見とけってかんじやわ。

適当にその辺を歩いてると小さな公園に辿り着いた。
いっぱい歩いて疲れたからし
結局どんだけと歩いてもここがどこか
分からんってのは変わりないし、
とりあえず休憩することにして、ベンチに座った。


……ここどこや?
お父ちゃんとお母ちゃんはどこいったんやろ?
俺のことなんかすっかり忘れてるんとちゃうやろか。




そんなこと考えてたらちょっと涙が出てきた。




『ねーぇ、何してるの?』



顔を上げると、そこには
同じ歳くらいの女の子が俺を覗き込んでいた。


「うわっ?!なんなんや、お前?!」
『えー?私?』
「びっくりさせんなや…」


女の子がおると分かると
涙なんかすぐに引っ込んでもうた。


ほらなんちゅーか、アレや。プライド…?
男のくせに女の前で泣くとか恥ずかしかったんや…。



『しゃべり方が私のおじさんとそっくりだねー!きみ、大阪の子でしょ?』
「……そうやけど。」
『やっぱりー!』



なんや、コイツ。誰やねん。
こっちは迷子で困ってるっちゅーのに…。



『なんで東京にいるの?引っ越してきたの?』
「いや、ちゃうよ…旅行しにきたんや。」
『ふー…ん。じゃぁお父さんとかは?…あ、もしかして迷子…』
「ち…ちゃうわっ」
『えーじゃぁなんで一人?』



なんて言おうか…。ほんまは迷子やけど。
"迷子です"なんて恥ずかしーて、言えるか。


『あ、分かったー!一人で旅行に来たんだ!』
「は…?」
『あれ、違うの?』
「あ、いや………もう、それでええわっ」
『?』



はよ、どっか行けよ。
迷子じゃない言うたから交番とか行かれへんやないか…。


『じゃあ私と遊ぼうよ!』
「は…?」
『だってもう行くとこないんでしょ?だからこんなとこにいるんだよね?』


何を言うとんねん…コイツは



『そうそう、私ねーさっきお財布拾ったんだー』


え、ネコババ?


『それで交番に届けたら探してた人がいてね、お礼にお小遣をくれたの!だから私、今お金もt…「交番?!交番があるんか?!」


よっしゃ、これでお父ちゃんとお母ちゃんに会えるわ。


『…あるけど』
「連れてってーな!」
『交番に…?なんで?やっぱり迷子なんじゃ…』


ギクッ。し、しまった。
ばらしてもうたわ…。


「………。」


バカにされるやろなぁ。ほんま最悪やわ…。


『まぁいいや、どうでも。で、どこに遊びに行く?』
「どうでも、て……」
『だって〜どうせ見つかるまでは暇なんでしょ〜?迷子なんて大きな鬼ごっことでも思ってればいいじゃない。ね、だから遊ぼうよ〜。』



なんか変わったやつやな。


……まぁでも、ええわ。

どうせ交番行っても、お父ちゃんらが来るまではつまんないしな。


「ええよ、遊んだる。」
『やった〜!!』


ニッコリと笑ったその子はなんや、ちょっと不本意やけどかわいいと思った。


「そういや自分は名前、なんて言うん?」
『nameだよっ♪nameって呼んで 君は?』
「ゆうし…や。」
『そっか。んじゃ早速!ゆうし君は………』
「ゆうしでええよ。」
『ゆうしはどこ行きたいの?』
「んなん分かるかいな…。東京来たの初めてやし。」
『あ、そっか。』


なるほど…と呟いてからnameは何か思いついたようにハッとした。


『探検しよう♪』


探検……?
再び迷子になる確率、大。


「探検は俺イヤ……」
『よぉしっしゅっぱ〜つ』


俺の訴えなんてお構いなしで
nameは走っていくからついて行くしかなくなった。


俺、多分、今日は野宿や。





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