モテる彼氏を持つと苦労します




◇◆


『跡部今日は一緒に帰れる?』


終礼が終わるのを待ち構えていたかのように
ニコニコしながら、nameが俺にそう言ってきた。


「あーん?…おぅnameか」


いつもテニスとかで相手してやれてないしな。
それに今日は暇だ。
今日こそはちゃんと、彼氏らしく送ってやろう。

いや、俺の家でゆっくりするのも悪くないな。


『ね、で一緒に…「けーごーっ」


チっ。誰だよ。
今俺はnameとしゃべってるっつーのに。
空気の読めないメス猫だな。


「一緒に帰ろっ!」


高い声のふる方を見ると、nameとは正反対のケバい女がいた。
コイツ、毎日クラブの後に話し掛けてくるやつだ。
苦手なんだよなぁ……


「ねーいいでしょっ?」
「………」


よくねーよ。 面倒だな、無視するか。



「ねーぇ!」
「…あぁ」
「やった!ちょっと待ってて、帰る準備してくるからぁ」


…は?おい、ちょっと待てよ。
お前に返事してねぇ。俺はnameに言ったんだが。


沈黙が流れる。


name絶対誤解してる…な。




『別れよ。』
「えっ?」
『え、って何?』
「ちょっ、おい、待てよ! 何でそんな急に…」
『急に?なんでって…?分かんないの?!』


今のことか…?



『毎日、毎日クラブだし、たまにクラブがなかった日だって忙しいって下校さえ一緒にしないじゃない!』
「…っ」
『跡部、本当は私なんか好きじゃないでしょ?!』
「そんなことな……『もうつき合ってても...全然楽しくないの…っ』



そう言ってnameは教室を出ていってしまった。


今のってあれか…?フラれたのか…?
おいおい、冗談じゃねーぞ、ふざけんなっ。

好きじゃないだと?!
好きに決まってんだろ!!


「けーご。お待たせ。」


何もかもお前のせいだ、と怒鳴ってやろうとしたところで
nameのさっきの言葉を思い出した。

"毎日クラブだし、たまにクラブがなかった日だって忙しいって下校さえ一緒にしないじゃない"

ああ、コイツのせいではないな、俺が悪い。



「悪いが今日は無理だ。」


俺は急いで出ていったnameを追いかけた。
このまま終わるなんて絶対にごめんだからな。



まだそんなに遠くへは行っていないはずだ。
ブレザーのポケットから携帯を出し、電話をかける。
が、やはりnameが出る様子はなかった。

そのままアドレス帳から違う名前を探し電話をかける。
今度の相手はすぐに電話に出た。


「おい!樺地!nameを探してくれ!」
《ウス…》


そのまま走り回って学校のいたるところを探したがいない。
家にも一応連絡をとったが帰ってきていないらしい。
通学路にもどこにもいない。
しまいに予報では降水確率30%だった雨まで降ってきた。


仕方なくコンビニとやらで透けた傘を買って商店街を歩いた。


少し雨宿りのために
細く暗めの路地に入るとそこで、やっと
しゃがみ込んだnameを見つけた。



『………っ』



泣いて、る…?



「おい。風邪ひくぞ。」










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