生きるよ、あなたがそれを望むなら





岳人は大きなテーブルも食べかけのパフェも越えて私の方へ跳んできた。
私は思いきり押し飛ばされた。









ガシャシャシャーーン!!



……?






【きゃああぁあぁあああああ】


【おい!車が突っ込んだぞ!】


【男の子が轢かれた!】


【誰か救急車を呼べ!!】


【女の子は?!大丈夫?!】




……なに…な…んな…の?

岳人…は?…岳人?



私のすぐ目の前で止まっている真っ赤な車。
車窓から見えた運転手の顔も真っ赤。
窓ガラスを浴びた私の左腕も真っ赤。
車の下の液体も真っ赤。

それは、岳人の 赤。



『なんで……?』
「………name…」
『な、何?!岳人?!どういうこと?!何してるの?!!ねぇ!!!』
「焦りすぎだ…ろ…」
『ぇ…ヤダ…ちょっ…』


何が起こっているかも分からないくせに涙が止まらない。


うそ、何が起こっているかなんか分かってる。
でも分かりたくない、理解したくない。考えるだけで恐ろしい。

泣いちゃダメだ。
思ってることがバレてしまう。本当になってしまうかもしれない。



"岳人が死んでしまう"なんて……



「泣き虫…」
『泣っ…いてないっよっ』
「泣くな…」
『……うっ…ふぁっ』
「はは、泣…きすぎ…」
『だってっ…岳…人っ』
「お前が……無事な…ら いい…大丈夫…」


よくないよ、何が大丈夫なの?
遠くで救急車の音がする。
岳人の手が私の頬を撫でる。そして岳人は苦しそうに笑った。


「な、ぁ…追ってきたり、すんな…よ?お前は生き…っ…ろ。」


手が離れた。

店の前で止まった救急車の中から
救急隊が出てきて岳人を救急車に運び込む。
私も促されるがままに救急車に乗った。


『が、岳人っ……!』


『岳人、岳人、岳人ぉ!!』


イヤだぁぁああぁあぁっ!
いやいやいやいやいや!
岳人死んじゃイヤだ!!!!
死なないでっ死なないでっ....!

パフェ食べ終わってないよ?!
今日はしょうがないからおごってくれるんでしょ?!
水族館まだ行ってないよ?!
私の誕生日もまだ来てないよ?!
岳人の今日、行きたかったところにまだ連れていってもらってないよ?!
まだまだ一緒にしたいこと見たいことあるのに..っ

今日だってまだ手しか繋いでもないじゃない!!



『うわぁぁああぁあ…っ!!!!!!』



救急車の中なんてことはもう忘れていた。
泣いて泣いて泣いて泣いた。
身体から一滴の水もなくなるくらい。

それでもいい、それで私が死んだっていい。


だから、

おねがい

誰でもいいから、岳人を 助けて...っ












それから何時間たったころだろうか。


岳人がふたたび目を覚ますことはなかった。




飲酒運転の人は捕まった、と誰かが言っていた。




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