初めてソイツを見たのはどこだったか。

どっかの島だったが、
島の場所はハッキリとは覚えてねぇが、
ソイツのことはハッキリ覚えている。 




その日、 

俺が少しその場を離れた間に、
俺の部下は海賊に囲まれていた。

G-5はその辺の海賊ごときに
やられてしまうほどヤワな奴らではないが、
どうやら今はそんなこと言ってられないようだ。


なぜなら、アイツらは
酒を飲んでいるところだったからだ。

あれほどハメを外すなと
注意しておいたのに、なんだこれは。

ベロンベロンじゃねーか。


「おい、海兵さんよぉ?金になるものは置いていった方が身のためだぜ?」
「らーにいってんらよー」
「そーらそーらわたされーぞー」
「酔っ払いが何言ってんだ。おい!お前らさっさと身ぐるみ全部もってっちまえ!」


おー!、という掛け声と共に
海賊共が、部下に襲いかかろうとする。

情けねぇ…

いくら自業自得だとはいえ、
俺の部下だ。見捨てるわけにはいかねぇ。

そう思って、能力を使おうとした時、


「こらーっ!!!!!!」


ひときわ大きな声が酒場に響く。



「…なんだぁ?」


声のする方を見ると、
標準より少し小さめの女が立っていた。

何とも動きやすそうな服で
一目で一般人ではないことが分かった。

…恐らく海賊。恐らくだ。



海賊だと言い切れないのは
ソイツは何故か海兵の味方をしているからだ。



「なんだ、テメェ。」
「私は名前、海賊よ!」
「あ?海賊かよ。こっち側じゃねぇか。」
「かいぞらってー?」
「酔っ払いは黙ってろ。よし!じゃあ一緒にコイツらをかっぱらおうぜ!」
「黙るのはそっちのほうだわ。」


そう言って近くにあった
酒の瓶を海賊に向かって投げた。

─パリンッ


「ってぇ…」
「船長?!!」


瓶は海賊の船長らしき人間の
左肩にあたり、少量だか血が出ていた。


「テメェ何しやがる!」
「んー…宣戦布告?」
「フザケやがって!お前らやれ!!!」


また、おー!、という掛け声と共に
海賊共が、今度はその女に襲いかかる。


「ふふ、血さえあればこっちのモンよ。」


そう呟いたかと思えば、
一人の海賊が急に倒れた。


「ぐはぁっ…」
「おい、どうした?!」


見ればそいつの背中から血が出ている。

そしてその血がいきなり動き出した。
…こりゃ、一体どういうことだ?


「うわああああああっ!!」
「お前っ!能力者か?!!」
「ん、正解☆」


…能力者だと?
海賊で能力者であれば、
結構な額の賞金首になるはずだ。

だが、こんな女知らんぞ。


「私は鮮血の実の能力者、血液人間よ。」
「鮮血の実…?」
「そ!血を自在に操れるの。お望みならば、その船長さんの血を全部抜いて殺してあげてもいいわよ?」
「なっ?!!」


そんな実は聞いたことねぇ。


というか、悪魔の実は
"ゴムゴム"だとか"モクモク"だとか、
"オペオペ"みたいに
同じ文字を繰り返す名前のはずだが。


鮮血の実…なんてもんは知らねぇな。


考え込んでいる間に
海賊共は一人残らず逃げていった。


「あんなんでよく海賊なんて出来るもんだわ。」
「ありがろーございますぅー」
「あら、全然かまわないわ。それより貴方達ベロベロだけど大丈夫?家まで送りましょうか。」
「その必要はねぇ。」


そこで俺はやっと言葉を発した。


「す…スモヤン?!」
「おめぇら、何してんだ。ハメを外すなと言ったハズだが。」
「う…す、すんません。」
「…?」


女が居心地悪そうに
こちらの様子を伺っている。

「俺の部下が世話になったな。礼を言う。…名前、だったか?」
「はい!名前です!ゲニーピッグ・ファイブ・名前!」
「あぁ…」


やっぱり聞いたことねぇなぁ。
ちらとソイツを見ると
キラッキラした目でこっちを見ていた。


「…なんだ?」
「あの!お名前は?!」
「…スモーカー」
「スモーカーさん!素敵!好きです!連絡先教えて下さい!」
「はあ?!」


何言ってんだ、こいつは。
今会ったばかりだろうが。

「ダメですか?」
「ダメも何もお前海賊だろうが。」
「はい、それがなんですか?」
「俺は海軍だぞ。お前を捕まえるのが仕事だ。今日は部下たちのこともあるから見逃してやるが、次はねぇ。」
「えー…」


コイツはバカなのか。
えー…じゃねぇよ。

話も済んだし、さっさと帰ろうとしたら、
上着を思いっきり引っ張られた。


「あの!じ、じゃあ!私、海賊やめますっ!」
「は?」


…は、話にならない。

海賊をやめたからって、
はいそうですかと
連絡先を教えるわけないだろう。
 



「悪いがお前のおフザケに付き合ってやる暇はねぇ。おい、お前ら帰るぞ!」


えぇー…という部下共の
声を無視して、酒場から出ようとした時、


「海賊をやめてもダメなら、かっ、海軍になります!私本気ですからっ!絶対に諦めませんからね!私のこと忘れないでくださいよ!!!」









あまりにも衝撃的過ぎて
ちょっとの間忘れられそうにない。




…………


∵あとがき 
 あれ、中途半端じゃね?
 甘くも切なくもなんともない。









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