ローの船のローの部屋。

いつもと変わらず、
たくさんの医療書が棚に並んでて、
いつもと変わらず、
同じ場所にベッドがあって…。


つまり、いつも通りってこと。


…いつもと違うことといえば
ローの機嫌がすこぶる悪いことかな。


「……。」


むすっとしながら足を組んで座ってる。
…いや、元々にこやかな顔を
してる時なんてほとんどないんだけど。

あれ?それじゃ結局いつも通りなのか?


「ロー」
「なんだ。」
「なんだじゃないよ、なんで怒ってるの。」
「怒ってねぇ…」
「怒ってる。」
「怒ってねぇ」


んじゃあ、なんでそんな
落ち着きがないのかなっ!!

足揺らすとか、典型的な不機嫌じゃない。
せっかく久しぶりに会えたのに。



ローはハートの海賊団の船長で、
私もまた他の船で海賊をやっている。
私は船長ではないけどね。

ある時、ある島に偶然居合わせた時に
たまたま、助けてもらったのがきっかけで、
私たちは知り合いになった。


そこから何度か連絡を
とっていくうちに、だんだん惹かれていって、
今は所謂、恋人という関係になったわけなんだけど。


「…もー、じゃ私、帰るよ?」
「……」
「船長も心配してるだろうし。」
「チッ…」

 
し、舌打ちされた?!

ローを見るとさっきより
眉間のシワが増えた…ような気がした。


「やっぱり、怒ってるよね…なんなのよ。」
「船長、船長って…お前は誰のなんだよ。」
「え…?」
「誰の女なんだよっつってんだ。」


…も、もしかして
私の船長に対して怒ってらっしゃる?






まさかさっき言われたこと気にしてたの?!


あぁ、さっきと言うのはですね、
私がローの船に遊びに来るとき、
船長が
"俺の名前に手出すなよー?"
って私の肩に手を置いて言ったんですよ。


もちろん、フザケてだよ?!
からかわれただけですよ?!
俺のって、俺のクルー、って意味だと思うし。



まさか、本当にまさかだけどもね!
それで怒ってたりするの?


「何黙ってやがる。」
「えっと、それは…あの、」
「……」


ああああああ、また眉間のシワがぁああっ!


「誰のってね!ろろろ、ローに決まってるでしょ!今更なにを言てるの!」
「…は、どうだか。」
「さっきの気にしてるの?あのねぇ、あんなの無視しとけばいいんだよ、あの人いっつもあんなんなんだから。」
「ほーう。いつも?」
「うん、え?いつも…え?」


なに、なに?
私なんか墓穴ほったか?



「お前はいつも船長に肩抱かれて、俺のって言われてんのか、へぇそうか。」
「えぇ…ちがっ」


なんで、そうなるんだぁーっ。
今日のローすこぶる機嫌悪いな…。


「もー…」
「お前は俺のなんだったら、あんな船長捨てて俺の船に乗ればいい。」
「え、やだ。」
「あ"?」


しまった、即答してしまった…!

いや、だってそれはまた、別の話でしょ?!


「私は私で海賊をしてるの。私にも私の仲間がいるのよ。そんな簡単に見限れるもんじゃないの。ローだってそうでしょ?」
「………。」
「あのかわいいかわいいベポを、私のために海に捨ててよって言われたら、出来るの?ん?」
「無理。」


即答。

恐らくローは
理屈では分かってくれてると思うけど。

でもまたなんだか
納得がいってないような顔をしてる。


どうすれば、分かってくれるのかな?
私にはローしかいないんだってこと。



「お前は…「あ、そうだ!」…なんだ。」
「私のこれ、置いていってもいいよ。」
「は?」


そう言って私が指 指したのは、自らの左胸。


「心臓。ローになら預けてもいい。」
「は?!」


ローの能力をもってすれば、
私の心臓を取ることくらい容易いはず。


「…もし万が一俺に殺されたらどうする。」
「そんなことするの?」
「……」
「…え、するの?!!」
「さあ」
「…うぅ、ヒド。んー…でもいいよ、ローなら。」


そんな無意味に私を
殺すようなことはしないと信じてる。

これで私のローへの想いが
分かってもらえるなら、
これくらいお安い御用だ。


そんなことを考えていると、
ソファから、ふっ、と笑う声が聞こえた。


「な、なんで笑った?!」
「いや、まさか、命を差し出させるとはな」
「だってローが…っ!」
「なかなか面白い返答だ」
「か、からかってたのー?!」


さっきの仏頂面はどこへやら。
ローは愉快そうに笑った。


「心臓はいらねぇ。」
「え?」
「誤って潰してしまったら、シャレになんねぇ」
「潰っ…?!」
「それに」


いきなりローが私の腕を引っ張るから、
よろけて私は、
必然的にローの胸の中に飛び込む体勢になった。


そして耳元で…


「おまえの心臓(ハート)は元々俺のもんだ。わざわざもう一度取る必要はねぇ、そうだろ?」
「…っ!」






どうやら、心臓なんて
とっくの昔にとられていたようです。
 



…………


∵あとがき 
 ヤキモチ妬きな甘ったるい
 トラファルガーになってしまいましたね。







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