清子に、旭が好きなんだ、と
打ち明けたのは1年の夏。

清子に、マネージャーにならないか、と
誘われて排球部に入ったのは1年の秋。

清子が、旭と学校でよく
一緒にいるようになったのは、2年の春。

清子と、旭が付き合っているという
噂が流れ始めたのは、2年の夏。



そういえば、マネージャーになってから
清子と恋話をする機会は無くなってた。

あまり男の子と話したりしなかったけど、
排球部に入ってから話せるようになった。

それを見て清子は
私が旭のことはもう好きじゃない、と
思ったのかもしれない。

本当のことは分からないけど、
そんなこと どうでもよかった。

好きになってしまったのなら仕方が無い。
むしろ、私に引け目を感じて
両想いにも関わらず身を引かれる方がイヤ。


でも、やっぱり自分の気持ちは
言っておかないとフェアじゃないし、
これからも彼らと付き合っていくのなら、
いうべきだと思った。


『清子、私は今でも旭のことが好き。どうしようもないくらい。でも、邪魔するとかはしたくないし、もう諦めるから、安心してね。』


そう伝えると清子は怪訝そうな顔をした。
私が二人のこと知らないと思ってたのかな?

私が背を向けて教室に戻ろうとした時、
清子は何か言いたげだったけど、
口を少し開けただけで結局何も言ってこなかった。


なんだったのか少し気にはなったけど、
別に、まあいいや。
もう、これは終わったこと。
今はもう排球部マネージャーとして、
部員の練習のサポートに打ち込もうと思った。


それからも私達は変わることなく過ごした。
最初こそ、あちらは少し私に
遠慮していたようだったけど
すぐにいつも通り
一緒にマネージャーの仕事をしたり、
昼休みは一緒にご飯を食べたり、
休日は一緒に遊びに出かけたりするようになった。

何も変わったところはなかった。



そして私たちは3年になった。

旭のことを好きでなくなったと言えば
嘘になるけど、前のように二人を見て
苦しくなるのは少なくなった。


そんなある日、

私が遅れて部活に行くと、
みんなが集まって何か話しているのが見えた。

『んー?なんだろ、レギュラー発表とかかな?』


私も輪に入ろうとした体育館に
足を踏み入れた瞬間、私は自分の耳を疑った。



「俺と清水、昨日から付き合うことになったんだ。」



……え?

思わず私は体育館から出て隠れた。
田中や西谷の絶叫が聞こえる。
澤村や菅原の驚いた声も聞こえた。

でも、そんなこと、どうでもいい。

昨日からって…どういうこと?
今までの二人は一体何だったの??


「…名前?何してるの?」
『?!』


驚いて横を見ると旭が
体育館の入口から
こちらを覗き込んでいた。


『旭っ!どういうこと?!清子と…っ』
「ん?あー…聞こえてたの?!」


きこえてたよ!昨日からって何?!
そう言おうとしたが旭の言葉で遮られる。


「そのことで名前に言っときたいことがあったんだ。今いい?」
『なっ…なに?』
「恥ずかしいから、ちょっと移動しよう」
『……、?』


旭の後をついて誰もいない中庭に来た。

旭がベンチに座ってとなりを
トントン叩くから、私は旭の隣に腰かけた。

前かがみで 両手で顔を覆い隠して、
ふーっと息をついてから、
手を少し下げて目だけが見える体制になった。



「あのさ、俺は清水と付き合うことになったんだけど、そのきっかけっていうのが名前なんだ。」
『私?』
「そう。実は俺、1年の時から結構最近まで名前のことが好きだったんだ。」
『……?!!』



結構最近まで…?


「それでさ、ずっと清水に相談してて、ズルイけどさ、俺、清水に名前が俺のことどう思ってるか聞いてきて欲しいとか頼んじゃってさ。」
『………。』
「まあそれで、諦めがついたわけなんだけど。で、昨日清水から告白されたんだ。名前のこと相談してた時からずっと俺のこと想ってくれてたって。」


ちょっと待って、ちょっと待ってよ。
じゃあ、私が2年の時、諦めるって
伝えたときは二人は付き合ってなかったの?!


「どうでもいいよな!…こんな話聞かせてごめんな。でもやっぱちゃんと終わらせたかったから。」
『…終わらせる?』
「そう…俺の中の名前のこと…」


終わられたら困る。



『旭…踏ん切りがついたって言ってたけど、清子から、私が旭をどう思ってるって言われたの。』
「え…。東峰の恋はもう実らないよ、って。」



……あぁ、そう。なるほどね。

清子は私と旭が両想いって知ってたんだ。
それを私に隠して、
旭の相談にのるフリして近づいてたんだ。

たしかに、私はあの時諦めるって言ったよ。
でもさ、旭の恋はもう実らないよっておかしくない?
諦めるって言ったけど、諦めたとは言ってないじゃん。

なに、チャンスだって思ったの?

ひどい話だね。

それで何食わぬ顔して告白なんてしちゃって。
付き合って。私に何て言うつもりだったの?


ふざけるな。お前だけが
勝ち逃げするなんて、絶対に許さない。


別れされるだけでなんて済ませてやらない。


『うそ…っ。私も1年の時からずっと旭のことが好きだったのに…。清子にも私…相談してたのに…っ。』
「え…?!」


ひどい…、と顔を覆って泣いて見せれば




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