みなさんは人狼を知っていますか?
人に化けて人を襲う恐ろしい生き物です。
彼らはすぐには正体を現しません。
私たちと共に暮らし、共に生きて、
信頼を得た後、本性をあらわにします。
あなたの横にいる大切な人も、
もしかすると、あの恐ろしい人狼かもしれません。
何十年も前の話です。
私が死に物狂いで逃げて、
この村に辿り着いたとき、
同じく逃げてきたみんなが
お互いについて何も知らなかった。
わかっていたのは、帰る場所がどこにもないということ、
数日前の戦で家族をなくした者ばかりだということ。
それもあってか、私たちはここでの
新しい暮らしが始まってもお互いに壁をつくっていた。
笑顔なんて一度も見せず、言葉も交わさず、
ただただ日だけが過ぎていくような暮らしだった。
でもそんな私たちに対して、
隣の村の村人や周りの人たちは優しく接してくれた。
最初は、その優しさも感じられなかった。
でも日が経つにつれて、私たちは感情を取り戻していった。
そして、気付けば私たちはいつの間にか周りに心を開くようになった。
作物を作ることを覚え、街にでることも知った。
会話も増え、お互いを知るようになった。
中でも一番年の若い、赤也という男の子は、
最初とは比べ物にならないくらい明るくなった。
その村はいつからか"立海村"と呼ばれるようになった。
私が住むそこは、そんな平和で小さな村でした。
村人は私を含めてたったの9人。
それでも、みんなで支えあって幸せに暮らしていました。