越前が帰ってきた次の日、また
村長だけが集まって話し合いをすることになった。


俺らの村の村長は幸村だが、
体調が優れないため、俺が出席することになった。
青学村からは手塚と越前。
氷帝村からは、跡部。比嘉村からは木手、
四天村からは白石が出席した。



見たところ、越前は体力も回復し、
落ち着きも取り戻したようだ。


「では、越前。覚えていることを話してくれ。」
「分かりました…。」


一度深呼吸をした後、越前は話し始めた。

「昨日、昼に竜崎から星を見に行こうって誘われた。…別に断る理由もなかったし、夜になったら、集合場所に行ったわけ。」
「外に出たってことか?」
「そう、山に登った。」
「…だから昨日の夜から居なかったのか。」



これで、二人が夜、
村から出た理由は明らかになった。


「少しして、気温も下がってきて、村に戻ろうとした時、」
「…………。」
「立海村の誰かに襲われた。」
「「?!!」」

 
いま、何と言った?

立海村、だと…?!フザけるな!!


「たわけたことを言うな!我が村に殺人犯がいるというのか!」
「暗かったからちゃんと顔は見えなかった。でも!手首に立海村の人がつけてる革のブレスがついてたんだよ!」
「バカな!ありえん、だいたい「真田。」…何だ!」
「ちょっと落ち着きって。話がまとまらへんわ。」
「…しかしっ!」
「黙ってもらえませんかね、まだ話の途中ですよ。」
「…うむ。」


納得がいかん。

立海村の幸村、柳、仁王、丸井、柳生、
ジャッカル、赤也、それにナマエ。
その中の誰が殺人なんてできるというんだ。


「俺は竜崎を逃がすために囮になった。村に帰るくらいの時間は十分に稼げた。だから竜崎は無事のハズだったんだ!」
「……しかし、実際はそうは行かなかった、と。」
「そうっす…。だから相手は間違いなく一人じゃない。それにおかしなことはまだあるんです。」
「おかしなこと、ですか?」
「襲ってきたやつには人とは思えない、鋭い牙があった。しかも、足の速さも獣みたいだった…、」



ますます、納得がいかない。
そんな牙が生えたようなやつも
獣のような足の早さを持ったやつもおらん。


「それ、ほんまに人やったんか…?」
「間違いないっス。シルエットは人だったんで。」


今、俺にとって牙だとか足の速さ
なんてどうでもいい。
立海村が疑われるということの方が重大だ。


しかし、越前が嘘を言ってるようには見えない。

そんなとき、跡部が呟いた。


「……、人狼…かもしれねぇ。」
「「人狼?」」
「…ああ。信じられねぇが。」
「なんだ、それは?」
「以前、本で読んだことがある。おい!樺地!あの本をもってこい!」 
 
そういつものように指を鳴らすと、
樺地が分厚い古い本を持って部屋に入ってきた。


「たしか…後ろの方の…、ああこれだ。」


跡部が指さしたところには
人狼の村、と書かれていた。


「__人狼とは人間に化けた狼であり、村人を殺し捕食することを目的として、村に潜伏する。定期的に村を変え、ある程度、その村で過ごし馴染んでから、本性を現す。____………か。」
「ああ、こんなもんただの作り話だと思っていたが…。」
「でも、こんな感じだったっスよ。」

 
越前は恐ろしい絵柄の挿絵を指さした。


何を言ってるんだ?
コイツらは、立海村に
人狼がいるとでもいいたいのか?


「人狼か何か知りませんが、殺人鬼のいる村の近くで、今まで通り過ごすなんて無理な話ですね。俺は今日中に村人を連れて出ていきますよ。」



木手は、誰の反論も聞かずに部屋を出ていった。


「…まあ、普通そうなるわな。」
「真田、お前は昨日の夜、どこにいた?他の村人で変な行動をしているやつはいなかったのか?」
「俺は寝ていた!だから、他のやつが何をしていたかは知らん……」
「アリバイがないんやったら、どうしようもないわ。、真田くん…」
「…むぅ。だがっ!」
「真田、俺たちは何代もそれぞれの村で暮らしてきている。生まれた時から、ここで住んでいるんだ。 こんな事言いたくはないが、 お前の村は誰一人、生まれも育だちも、素性も分かっていない。」
「手塚の言う通りだ。お前のところが一番に疑われるのは最もだぞ。その上、被害者の証言もある。」
「今まで、真田くんらを疑って暮らしてきたわけやないけど、今回ばかりは庇ってあげられへんわ。すまんな。俺も村の奴らの安全を一番に考えたい。俺のとこの村も、悪いけど今日中に出ていかせてもらうで。」
 

ありえない。

だが、皆のいうことは的を得ていて、
反論する根拠もない俺にはどうしようもなかった。






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