落ちたプリントを拾いながら
消えたいとか言うから焦ったぜ、と
向日先輩は呟いた。


…ああ、それか。

軽い気持ちで言ったつもりなんだけど。


…それに、
消えたい原因はあなたなんですけどね。
本当に思い出しただけで恥ずかしい…。

変な倒れ方しなかったかな…?



プリントを拾い終えても、
先輩は出ていく気配はなく、
またソファに座った。


『…あの、向日先輩、授業はいいんですか?』
「授業?今、昼休みだぞ?」
『えっ…ひ、昼休み?!』


昼休み?!

体育って1時間目だったよね?!
私…っ、
4時間近く寝とるーっ!!


「弁当とってきてやろうか?」
『…いえ、お腹すいてないのでいいです。向日先輩はいいんですか?』
「もう食ってきた!」
『…そうですか。』



チャイムはなかなか鳴らない。
出来ればこのまま鳴らないでほしい。

もしかしたらもう向日先輩と
話す機会は二度と訪れないかもしれない。

だから今のうちにいっぱい話さないと!


…でも結局そんな願いは虚しく予鈴がなった。



「…そろそろ、帰るかぁー…」
『……。』
「お前は教室に戻んねぇの?」 
『次、英語なんでここでサボります。』
「はは、お前でもサボるとかするのかよ。」 
『向日先輩もたまにしてるじゃないですか』 
「まーな、…てか、何で知ってるんだ?」 
『えっ…?!あ、それはまあ…』
「?」
『と、友達に聞きました…!』


ううう嘘ではない!

同じクラスの鳳くんに
中庭でよく向日先輩がサボっている、
というのを聞いて、
たまに窓から見ることがあるのだ。


バレてたかー、と頭を書きながら
向日先輩は立ち上がった。

あ、もう行っちゃうんだ…なんて。
ちょっと胸のあたりがきゅぅぅとなった。


ドアのところまで行ったところで
向日先輩はくるっとひっくり返ってこっちを見た。


「あ、でも俺もお前のこと知ってるぜ!」
『え…?』
「いつも帰るときにテニスコートの方見てくれてるよな!誰を見てんのか知らねぇけどさ。」
『えっ…ええ?!』
「あれ、違ったか?」
『し、知ってたんですか…?』
「何回か目も合ってるだろ。」


そんな、まさか。
…たしかに目が合ったのではないかと
思うようなことは何回かあった。

でも思い上がりも甚だしいと思って、
気のせいだ、と思い込んでいた。



『…合ってました、ね』
「ははっ、だろ?!」
『勘違いだと思ってました…』
「なんでだよ、毎日見てれば分かるだろー」


嬉しい。

私のこと気付いてくれてたなんて…
私のこと知ってくれてたなんて…



「じゃあな、しっかり体調管理しろよー?」
『あっあの!向日先輩!』
「…ん?」
『私、いつも向日先輩を見に行ってるんです!とっても高く跳んでてすごいなって!カッコイイなって!あと、向日先輩の太陽みたいな笑顔も大好きです!……憧れます!』


急に一気にしゃべり出した私に
向日先輩はもちろん自分でもびっくりした。


でも沈黙はそう長くは続かずに、
向日先輩は 照れんじゃん、とはにかんだ。

そして、


「じゃあ今日も見に来いよな!」


なんて。
あの私の大好きな笑顔でそう言ってくれた。



向日葵の微笑
英語:sunflower
意味:憧れ


先輩知ってますか?
"憧れ"って"好き"の手前の手前なんですよ。




-2014*02*18-





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