03




次の日また、珍しく早く目が覚めた俺は、
二日連続で朝練が始まるかなり前に学校に着いた。

さすがに、今日はジローは来てないみたいだし、
教室には誰もいないし正直、暇だ。


少し早いけど、部室に行っとくか、と思って
ふと、携帯を見ると、チカチカと光っていた。


「メールか??」




FROM:跡部
件名:朝練
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明日の朝練は、グランドを
大会前の女テニが使うため
中止になりました。
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明日? 別にわざわざメールしなくても
今日の部活で言えばいいじゃねーか。

不思議に思って、日付を見ると、昨日の日付だった。

昨日の明日…ってことは、つまり…、
今日の朝練がないってことか?



窓からグランドを見ると、コートでは
女子硬式テニス部がラリーをしていた。



「マジかよ……。」


っつーことは、あれか。二時間ほど暇というわけだな。
最悪だ。

一気にやる気が失せて、机に顔を伏せた。




『どうしたの?』
「?」


誰もいないはずの教室。

頭のほうから聞こえた声に、自然と顔を上げると
そこには昨日の転校生がいた。


「あ?お前は…」
『お前じゃないわよ。名前、名字名前よ。』
「…あぁ名字、な。」
『そう。それで?どうしたのよ、朝からそんなにつまらなさそうな顔して。』



話すのは初めてなのに、それどころか
会ったのだって昨日が初めてだというのに、
まるで、昔からこのクラスにいたように話しを進める。

何だ、この自然な感じは…?
こいつがそういう性格だからなんだろうか?


「…朝練。ないのに早く来ちまったんだよ。」
『あぁ、なるほど。』



ストレートに胸のあたりまで伸びている黒髪。
パーツの整って、鼻筋のとおった綺麗な顔。

昨日は、綺麗で近寄りがたいイメージだ、と思っていた。
が、そのイメージは一瞬にして、いい意味で覆された。


「お前…じゃなくて、名字は?なんでこんなに早く来たんだよ。」
『私?私は、教室の場所とか覚えようと思って。学校探検よ、探検。』



そういって、小さな子供みたいに
いかにも楽しそうに、笑った。



「それにしても、早すぎるだろ…」
『どうして?一時間目は7:30からでしょ?』
「はぁ? 8:30からだぞ。」
『ええ?!』


バカかよ、こいつは。
前の学校どんだけ早い時間のとこにいたんだ。

名字は一瞬しょげた顔をしたが、
またすぐに笑顔に戻った。



『早く来すぎたみたいね…。じゃあ学校の周りも見て回ることにするわ。』
「そうか…。」



そういって名字はカバンを置いて教室から出ていった。
が、すぐにまた戻ってきて、扉から少し顔をのぞかせた。


『そういえば、名前聞いてなかったね、なんて言うの?』
「俺か?…宍戸亮だ。」
『宍戸、亮…ね。ok、覚えた。じゃあ、またあとで!』



そして、また楽しそうに、教室から出ていった。
笑ったり、驚いたり、しょげたり忙しい奴だな。





名字今度は授業のギリギリの時間まで戻ってこなかった。




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