×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

 仔羊だって幸せだよ 

ふわり、そんな優しい感触。
誰かに頭を撫でられる感触にゆっくり意識が浮上する。

誰だろー、こんな風に優しいってことは跡部とは違うんだろーなー。
なんて考えながら、その優しい手に撫でられる感触に浸る。



一人ポツリと漏らした君に、俺は寝ているフリをつづけた。
……ここで俺が起きちゃダメだと思うから。

せっかく君が漏らした本音を、本当の君を。
また、君は隠して、誰にも見せないようにしちゃうだろうから。


……だめだよ、忘れちゃ。
全部忘れたら今ここにいる君がいなくなっちゃう。

嬉しいことや哀しいこと、嫌だったことに楽しかったこと。
よかったことだけ、なんていうのはできないけれど、
そんな苦しかったことも含めて、

これまでのすべてが君を形作っているんだから。


だから、全部、全部忘れちゃったら、
今までのすべてを苦しみながらも乗り越えてきた君が、
今を精一杯生きている君が。

……俺のことを覚えている君が、
いなくなっちゃう。


忘れたい、って思うこともあると思う。
知りたくなかった、思い出したくないっていことも。
……でも、その忘れたい、ってことも全部、全部含めて、
ナマエだよ。



……君は、俺のことをきれいだ、って言ってたよね。
自分とは大違いだ、って。

でもね、君だってきれいだよ。
そんな風に思いながらも精一杯頑張ってる君だから。
ナマエだから。
なんにもそんなこと思う必要ないから。


だって、こんなにも君の手は、

すごく、優しいんだから。

  end 
(2:2:12)