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 仔羊は哀れなんだよ 

こんな真夏の暑い日。
サンサンと太陽が照りつけてきて、いよいよ溶けてしまいそうだ。

……だけど、そんな日にも涼しいところはある。


「ぐぅ……」
「……みーっけた」


たとえば、学校の裏庭だとか。

ここは夏でも涼しい。
木々が生い茂り、焼かれるような太陽の光を遮ってくれるし、
間から時折、涼しい風が吹いてくる。


そんな居心地のいい場所にはもちろん、人がいる。
そこに、いつも寝ているような彼は、もちろんのこといた。

彼……もとい、クラスメイトである芥川慈郎は、
自分の服が汚れるだとか、そんなことは一切気にしないとでも言うように、
ゴロンと草たちの上に寝転がっていた。


私はそんな彼の横に腰を下ろす。

……いつみても、彼の髪はきれいだ。
キラキラと太陽の光を反射し、髪自身が輝いている。
ふわふわとしている髪は彼自身を表すかのように、優しい。

そっと彼の髪に触れる。
今もキラキラと木々の隙間から入ってくる太陽の光を反射して輝いていた。


「……君は寝ててもきれいなんだね」

……まるで、私とは大違いだ。ポツリと言葉がこぼれた。
ドロドロと渦巻く汚い感情を私は知っているし、持ってしまったことだってある。
でも、彼はそんな感情を一切知らない純粋な子羊のようにキラキラと輝いていた。


「…………ぐぅ」

もちろん彼は寝ているので返事なんてものは帰ってこない。
私も別に返事がほしくて言ったわけじゃない。
ただ、君を見ているとそんな言葉が出てこざる得なかったのだ。


……もうすぐ授業が始まる……。
いかなくてはならないという思いはあるものの、なんだか今日はもうここから動きたくなかった。

そんな思いから私も彼のようにパタリと倒れ込むようにして、寝転がる。
制服や髪が汚れる、なんてことは一切気にならなかった。


「あーあ……何もかも忘れて、何も知らなかったあの頃に戻りたいなー……」

どうしても君を見ていると、自分がとても汚く、醜く思えてくるんだ。
だったらなおさら、私も君みたいに、って思ってしまう。
きれいで、無知で、この世界のことが大好きだったあの頃に。


    
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