“跡部様に彼女ができたらしい”
それは学校についた途端聞こえてきた言葉だ。
そのことをどうしても信じたくなくて、
でも、そのことが本当のことだと思い知らされる光景があった。
「ちょっと!!くっつくなっていってんでしょ!!」
「アーン?照れてるのか?」
「なっ!照れてるわけないじゃない!!あんたの目が節穴なんじゃないの!?」
「何言ってやがる、俺様のインサイトを舐めるんじゃねぇぞ?」
「……っ……!!」
あぁ……本当なんだね。
もう信じざる、諦めざる得なかった。
私以外の女の子からの悲鳴も聞こえた。
どこからか泣いているこの声も聞こえたような気がした。
……きっとその子たちは私と同じように、あの王様に好意を抱いていた子。
廊下に見えたその光景の中で、君は楽しそうに笑っていた。
そんな光景から目をそらすようにして、私は屋上へやってきた。
重たい扉が音を立てて閉まる。
雲一つないような空、サンサンと輝いている太陽。
それは私の心とは正反対だ。
私の心は今、嫉妬と悲しみと悔しさと諦めと哀しさでいっぱいで大荒れ模様だから。
私なんかにはあの二人の恋を邪魔することはできない。
私から見ていても、あの二人はとてもお似合いだったから。
氷の帝王と彼女は氷の女王様。
まるで二人は出会うべくして出会ったのかというように。
そんな二人に私なんかが入れる隙間なんて一ミリたりともない。
それに、私はあんな彼の笑顔も作れない。
今まで見たこともなかったような、挑発したような笑みじゃない。
愛しいものを見る優しい笑み。
……ううん、笑顔が作れる作れない、邪魔できるできない以上に、
私は彼に気付いてもらえていただろうか。
わざと影になっていない場所を選び、そこに寝転がった。
……やっぱり、太陽は眩しい。
王様は女王様と幸せになりました。
でも、その裏には脇役である私たちも王様に恋をしていたのです。
君の邪魔にならないようにちゃんと諦めて、二人を祝福するから。
だから、もうちょっとだけ、好きでいさせてください。
「……ずっと……好きでした……」
ぽつりと空に向かってつぶやいた言葉は、
広い空に滲んで溶けて消えてった。
(この想いごと、空は滲んだ)そのあと何かが頬を伝った。
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