16

 パルソナスには、ミルチアデス戦役以前の神話がたくさん残っている。
 ほとんどが黄金の神についての神話だった。
 そして、その中にも黒髪の話は再三出てきた。
 パルソナスの神話は、創造主がこの大地を形成した時のことと、黒髪と太陽神の闘いの物語で形成されていた。
 神話のことは皆もなんとなく解ったが、またもやシンは前へ進むための方法を発見した。

「神話の出所はほとんどラク族だな」

 メンバーの調べてきた資料をペラペラとめくりながらシンは軽く言ってのけたのだ。

「うお。ホントだ。お前、本当にすごい観察力だな」

 資料を覗き込んで、ラクティが感嘆の声を上げた。

「著者が誰なのか、どこの出身なのかってのは当然見るとこだろ?」

 片方の眉を上げてシンは首を傾げたが、マールはいつもの自嘲気味の笑いを浮かべて首を振った。

「いや、考えつきもしなかった」

 シンはいつものようにため息をついた。
 それから改めてというように、皆の顔を交互に眺める。

「ラク族についてはどこまで知ってる?」

 質問は簡潔だった。

「ラクラミ草原の自治区にいる遊牧民だろ?」

 はるか昔のことを思い出すように、遠くを見ながらラクティが最初に応えた。
 残念な応えを聞いたというようにパージルが肩を持ち上げる。
 
「エスパーディアの幼年組でも知ってますよ、そんなことは」

 いつものように言い返そうとしたラクティより先に、マールが口を開いた。

「しかし、なんであの少数民族をどこの国も統合できずに来たんだろうな」

「過去の戦争について学んじゃありませんか」

 パージルからの優等生らしい反応があった。
 マールは肩を持ち上げて首を振る。

「あー、歴史の授業なんてほとんど寝てたからな」

 シンがするように小さなため息をついてルナが応えた。

「ラク族が戦争に勝ち続けてきたのなんて物語の中にもよく出てくるわ」

「最終的に他国からの侵略が面倒でパルソナスに自治権を認めることを条件に統合されたってわけですよ」

 ルナの言葉に、パージルが補足をつけ、そこでみなが同時にシンをみた。

 シンは、ニヤリと笑って言った。

「行ってみるか?」


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