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 いつもの5人はこの集団には全く似合わない場所に居た。
 王立図書館。
 パルスでも指折りの古びた石造りの荘厳な造りの建物だ。
 教会などとは比べものにならないほど重く暗い印象である。
 パルスの若者はめったなことでは近寄りもしない。
 
 受付の女性は厳格そうで、話の間中、5人と目を合わせることはほとんど無かった。
 マールのいつもの冗談にも一瞬眉を寄せただけで、まったく無反応。
 5人の気が重くなるのも無理はないが、その女性に案内されて立った棚の前で、またもや全員がどっと沈んだ。

 中で一番背の高いパージルの身長の3倍を優に超える高さの天井を、突き抜けるのではないかというほどの勢いで立つ棚には端から端まで、それから上から下まで、これまた多少揺れても絶対に落ちて来ないのではないかというほどぎゅうぎゅうに、難しそうな古びた書籍が詰まっていた。

 詰まっていた!そう!まさにその言葉がぴったりだった。

 しばし棚を見つめていた5人の中で一番に声を出したのはラクティだった。

「さて、どっから手をつける?」

「オレ、急に自信がなくなってきたんだけど」

「こんなにたくさんの本、はじめてみたわ」

 誰も顔を見合わせないまま棚をみつめて声を出す。

 そして、しばらく呆然とした後、全員がシンをみた。

 シンはすでにパターン化した流れで、小さなため息をついて腰に片手をあてた。

「だから、こういう時になんでいつもオレだよ」

「頼りにされてるってことだろ。もっと喜べよ」

 マールの言葉にまたため息をついて、シンは棚の方に目を向けた。

「手分けするしかないだろう。黒髪の使者や、黒髪について書かれてある資料は全部検討対象だ。それを感じさせるようなものも全部な」

 さて、みなは、言われても呆然と立ち尽くすだけで動かなかった。
 正確には動けなかったに近い。
 
 シンは腕を組んでみんなを見渡した。
 それから、またも小さくため息をついて、あごで小さくくいっと本棚を指し示した。

 仕方なく、みんなが棚に近づいた。

「マールはそっちの棚ね。私はこっちから」

「あんた、なんか嬉しそうだな。それにあいつも」

 ニコニコ笑顔でマールの目の前の棚を指し示すルナに応え、マールはパージルに目を向けた。

 すでにパージルは本を片手に嬉しそうにその上に視線を走らせている。

「パージルは本当に勉強家ね。だから優れたマーゴなんだわ」

「おい。みてろよ。オレの底力をみせてやるからな!」



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