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「ねえ、どうしても、ダメ?」

「ダメだ」

 即答するシンに向かってルナは頬を膨らませた。
 この少女がここまで食い下がるのは珍しいことだった。
 
「あんたはマーゴの修行を受けてない。正式なマーゴじゃない。マギアは使うべきじゃない」

 シンは、回復のマギアに関しては黙認していた。
 けれど、戦闘中、ルナが攻撃のマギアを使うことは決して許さなかった。

「ねえ、じゃあ、パルスについたら修行するわ」

「簡単に言うな」

 実際、彼女のマギアに助けられることは何度もあった。
 けれども、ルールを曲げるわけにはいかない。
 
「……シンが言ったくせに」

 ぼつりと、ルナは言った。

「何?」

「もう、いい」

 言ってルナはそれきり黙ってしまった。

 自分がパルスの民を危険にさらす。
 ルナはそう思っていた。
 それならば、自分は自分の力でパルスの民を守らなければならない。

『自分の運命は自分で決めろ』

 今のルナにとってその言葉が全てだった。

 色々なことに甘んじてきた。
 俯き、見失い、それが自分の生き方だと思っていた。
 周りの意見に身を委ね、周りの決定に身を委ね……。

『自分の運命は自分で決めろ』

 この人がくれたその言葉が、今のルナの言動力であった。

 それなのに、その本人がルナを再びカゴに閉じ込めようとする。
 納得がいかない。
 いくはずがない。

「シンが言ったんだよ」

 ルナはもう一度呟いた。
 彼が自分を止める理由が、ルナにはどうしても解らなかった。



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