10
「ねえ、どうしても、ダメ?」
「ダメだ」
即答するシンに向かってルナは頬を膨らませた。
この少女がここまで食い下がるのは珍しいことだった。
「あんたはマーゴの修行を受けてない。正式なマーゴじゃない。マギアは使うべきじゃない」
シンは、回復のマギアに関しては黙認していた。
けれど、戦闘中、ルナが攻撃のマギアを使うことは決して許さなかった。
「ねえ、じゃあ、パルスについたら修行するわ」
「簡単に言うな」
実際、彼女のマギアに助けられることは何度もあった。
けれども、ルールを曲げるわけにはいかない。
「……シンが言ったくせに」
ぼつりと、ルナは言った。
「何?」
「もう、いい」
言ってルナはそれきり黙ってしまった。
自分がパルスの民を危険にさらす。
ルナはそう思っていた。
それならば、自分は自分の力でパルスの民を守らなければならない。
『自分の運命は自分で決めろ』
今のルナにとってその言葉が全てだった。
色々なことに甘んじてきた。
俯き、見失い、それが自分の生き方だと思っていた。
周りの意見に身を委ね、周りの決定に身を委ね……。
『自分の運命は自分で決めろ』
この人がくれたその言葉が、今のルナの言動力であった。
それなのに、その本人がルナを再びカゴに閉じ込めようとする。
納得がいかない。
いくはずがない。
「シンが言ったんだよ」
ルナはもう一度呟いた。
彼が自分を止める理由が、ルナにはどうしても解らなかった。
[ 32/45 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]