3
リュートを感じる訓練をしたものは、その気配が読める。
もちろん、それを隠す訓練も同時に受けている。
のだが…。
燃え上がるようなリュートの気配に、思わずマールは身構えた。
気配の方角に目を向けると、涼しい顔のシンと目が合った。
そのシンが、磨いていた剣を鞘におさめて立ち上がる。
マールは目を瞬かせた。
今の気配はシンだったということか。
シンは、一度マールから目を反らし、その視線を足下に落とした。
それから意を決したように、こちらに体を向ける。
間を置かず、草を踏む音をさせながら、少し早足で歩み寄って来た。
「ずいぶん、仲良くなったんだな」
二人に声をかける。
「なんだ、嫉妬か?」
マールの言葉に、シンはため息をつく。
「何を言ってるんだ」
シンは眉をしかめた。
「まあ、確かにルナは美人だからなあ」
「おい」
納得と言った顔で、マールが頷く。
「シンは、マールを私に取られるんじゃないかって、心配なのよ。ね」
「『ね』……じゃない。勝手に話を進めるな」
珍しく憤慨するシンを見て、ルナとマールは顔を見合わせて吹き出した。
掴みどころの無い気持ち。
ルナとマールにはそれが解る。
孤独だったシンが、仲間を得て、今度は
無くす
と、いうことに不安を抱きはじめるのは当然のことだろう。
マールはよいしょと立ち上がると、ラクティたちのほうへ歩き出した。
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