3

 
 リュートを感じる訓練をしたものは、その気配が読める。
 もちろん、それを隠す訓練も同時に受けている。

 のだが…。

 燃え上がるようなリュートの気配に、思わずマールは身構えた。
 気配の方角に目を向けると、涼しい顔のシンと目が合った。
 そのシンが、磨いていた剣を鞘におさめて立ち上がる。
 マールは目を瞬かせた。
 
 今の気配はシンだったということか。
 
 シンは、一度マールから目を反らし、その視線を足下に落とした。
 それから意を決したように、こちらに体を向ける。
 間を置かず、草を踏む音をさせながら、少し早足で歩み寄って来た。

「ずいぶん、仲良くなったんだな」

 二人に声をかける。

「なんだ、嫉妬か?」

 マールの言葉に、シンはため息をつく。

「何を言ってるんだ」
 
 シンは眉をしかめた。

「まあ、確かにルナは美人だからなあ」

「おい」

 納得と言った顔で、マールが頷く。

「シンは、マールを私に取られるんじゃないかって、心配なのよ。ね」

「『ね』……じゃない。勝手に話を進めるな」

 珍しく憤慨するシンを見て、ルナとマールは顔を見合わせて吹き出した。

 掴みどころの無い気持ち。
 ルナとマールにはそれが解る。
 
 孤独だったシンが、仲間を得て、今度は

 無くす

 と、いうことに不安を抱きはじめるのは当然のことだろう。
 マールはよいしょと立ち上がると、ラクティたちのほうへ歩き出した。



[ 25/45 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -