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ヴィッシュの心配を他所に、ルニエに着く頃には、マールはすっかり三人の信頼を勝ち得ていた。
もともと、マールとラクティは似ているところが多かったし、シンに限って言えば、彼が自分のマーゴだと信じていた。
実際のところ、道中、<黒髪>とは何度も遭遇したのだが、本当に神託の降りたラクティとパージルたちに劣らないコンビだった。
ラクティたちは融合によって、魔剣を機能させることもできたし、いざとなれば究極の融合技も使える。
魔剣というのは疑似魔法の一種だ。
魔法の使えないエスパーディアが<黒髪の使者>に対抗するもっとも有効な手段だった。
それが使えない。
致命的に思える。
しかし、少なくとも、シンとマールのコンビはそんなことはまったく意に介していないようだった。
約束通り、マールは闘いの最中、シンの後ろを守り通した。
そのために、この傲岸不遜な男がパージルに頭を下げ、自分が途中で投げ出した上位魔法を覚えようとすることも多々あった。
マールは自分のことを『マーゴ見習い』と称した。
三人は、この男の意外な謙虚さを知った。
シンは明るさと自信を取り戻しつつあった。
時にはお互いをぼろくそにこき下ろすようなこともあったが、それだって、心を許しているからできることかもしれない。
とにかく、今や、マールは完全に旅の仲間という地位を勝ち得たのである。
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